日本大百科全書(ニッポニカ) 「蛸壺形土器」の意味・わかりやすい解説
蛸壺形土器
たこつぼがたどき
弥生(やよい)時代以来みられる高さ10センチメートル前後のコップ状の深い土器。もっぱらイイダコとり用の漁具である。弥生土器の実例は、関門海峡、瀬戸内海、大阪湾沿岸などにみられ、口の近くに綱を通す孔(あな)をあけたものが多い。古墳時代から平安時代にかけては倒鐘形で頂上に綱通しの環を作り付けたものが多い。ギリシアでは青銅器時代以来、夜間に火の光に誘われて上ってくるタコを簎(やす)で突いてとらえたと考えられている。トンガ、サモア、ソシエテの島々では、木の幹を切ったものにタカラガイを張り付けてタコを誘っている。中国、朝鮮ではこの種の土器は存在不明。たこ壺によるタコとりは日本特有のものかもしれない。なお、近・現代のものには大型品もある。
[佐原 真]
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