蛸壺(読み)タコツボ

デジタル大辞泉 「蛸壺」の意味・読み・例文・類語

たこ‐つぼ【××壺】

海底に沈め、が入るのを待って引き上げる素焼きの壺。 夏》
戦場で、兵士一人が隠れるために掘った穴。
自分だけ、または仲間内だけの狭い世界に閉じこもっていて、外部に目を向けないことのたとえ。「業界蛸壺化を懸念する」

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精選版 日本国語大辞典 「蛸壺」の意味・読み・例文・類語

たこ‐つぼ【蛸壺】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 蛸を捕えるのに使う口径約一〇センチメートル、深さ約二五センチメートルの素焼きのつぼ。長い幹縄に多くの枝縄をつけ、その枝縄に壺をしばりつけて、海底に沈めておき、蛸がその中にはいるのを見計らって、引き上げて捕えるもの。蛸が穴にひそむのを好む習性を利用したもの。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「和泉〈略〉塩壺蛸壺等 当所にてやく也」(出典:俳諧・毛吹草(1638)四)
  3. 砲撃爆撃を避けるために掘る、個人用掩体壕。
    1. [初出の実例]「演習地内の凹地や、土堤かげ、なかにはタコツボに身をひそめ」(出典:ジラード事件の教えるもの(1958)〈臼井吉見〉)
  4. たこ(蛸)

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改訂新版 世界大百科事典 「蛸壺」の意味・わかりやすい解説

蛸壺 (たこつぼ)

蛸突きとともにタコ漁の一つである。海底の穴や岩かげに入ることを好むタコの習性を利用して,素焼きの蛸壺を作り,これに縄をかけて海底に据え,1,2昼夜放置して未明に引きあげて獲る。100尋(ひろ)ぐらいの1本の縄に50から70の蛸壺をつけ,1艘の船に5,6本積んで,海底に流し据える。その縄の端に桐の木のウキや麦わらの束をくくりつけておく。かつては2人の漁民が船に乗り込み,くりあげ作業に従事したが,最近は機械でこれをくりあげている。蛸壺にはこのほか,瓦を2枚重ねて作るもの,タコが入ると,しかけでふたの閉まるものなど,くふうの施されたものが各地にある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蛸壺」の意味・わかりやすい解説

蛸壺
たこつぼ

タコが海底穴に潜む習性を利用して捕獲する漁具。素焼の壺で、大きさや構造など地方によって多少異なるが、普通、口径10~20センチメートル、深さ20~40センチメートル、重量1~1.5キログラム。操業方法は、100~200メートルの幹縄(みきなわ)に5~10メートル間隔に1メートル程度の枝縄をつけ、その先に壺を1個ずつ結び付ける。これを一筋(ひとすじ)とし、タコが生息していそうな岩礁付近の海底に10~20筋を投入する。2、3日間放置してから幹縄をたぐって壺をあげ、中に入ったタコを船内に収納し、からになった壺はふたたび海中に投入する。漁獲性能をよくするため、コンクリートあるいはプラスチック製の壺の中に餌(えさ)を入れ、タコが餌をとると蓋(ふた)が閉じる有蓋(ゆうがい)式蛸壺も使用されている。このほか、イイダコをとるために用いるアカニシやナガニシなどの貝殻や、ミズダコをとるために用いる木製の箱形のものもある。

[吉原喜好]

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百科事典マイペディア 「蛸壺」の意味・わかりやすい解説

蛸壺【たこつぼ】

タコの穴居性を利用してその中へ誘導し捕獲する漁具。1本の幹縄に,陶製の壺(口径10cm,深さ25cmほど)を結着させた枝縄を多数つけ,海底に敷設する。水切りをよくするため壺の底には小穴をあけ,新品はしばらく海水中でフジツボなどを付着させ目だたなくする。近年では蓋つきのものも使われている。
→関連項目漁具

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世界大百科事典(旧版)内の蛸壺の言及

【漁具】より

…(2)陥穽具類 定置網に匹敵するような大規模なものもあるえり類から,アカニシなどの殻を利用するイイダコ壺まで大小・形状さまざまであるが,なんらかの方法で対象種を誘集し,出にくい構造の漁具内に入らせる原理は共通である。餌を使うものが多いが,移動経路を知って仕掛けたり,産卵床(イカ籠),生息場所(蛸壺)を提供したりするものもある。せん,(うけ),どう,もんどりなどはおもに河川・湖沼で用いられる。…

【タコ(蛸∥章魚)】より

…餌は巣穴にもち帰るか,または手近な穴に身を隠すかして食べる。この性質を利用した漁法が蛸壺で,タコの好みそうな容積をもつ入れ物をはえなわ式に海底に敷設する。以前は素焼きのつぼを用いたので〈蛸壺〉とか〈蛸がめ〉といわれたが,今はセメント製のものを用い,中にカニを餌としてつるしたり,タコが入るとふたの閉まるようなものさえある。…

※「蛸壺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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