日本歴史地名大系 「蝦夷全図」の解説
蝦夷全図
えぞぜんず
九七×一七九センチ 写図彩色 高橋景保 文政五年頃 国会図書館蔵
解説 この地図には多数の測量方位線があり、蝦夷島のほかウルップ島を含む南千島諸島、ハボマイ諸島、シコタン・利尻・礼文・焼尻・天売・奥尻・大島・小島などの周辺の島々までが、いくらかの欠点を有しながらもほぼ正確に描かれている。間宮林蔵の作製とされているが、間宮が伊能忠敬の測量を補完した蝦夷地沿海実測図(文政四年)とは輪郭に多くの差異があり、内陸部には後者にみられない山々や河川が多数記入されている。地図の余白には「此図を此儘に写取遣候儀に御座候」という付箋がつけられており、これは帰国寸前のシーボルトから没収されたものである。しかしシーボルトはその前に写を作って持帰ったので、当図も「エゾ島および日本のクリール諸島」という名で著書「日本」に収められており、高橋作左衛門(景保)の原図によると記されている。以上から恐らく当図は、高橋景保を責任者とする幕府の暦局が伊能・間宮図成立以前に蝦夷地直轄時代の地図情報を集大成した最新の蝦夷地図であったように思われる。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報