改訂新版 世界大百科事典 「血管外科」の意味・わかりやすい解説
血管外科 (けっかんげか)
vascular surgery
血管病変の手術的治療を扱う外科の一分野。1950年代以降,動脈あるいは静脈の疾患に対する手術的治療は長足の進歩をとげた。今日行われている手術方法の多くは,以前にはほとんど考えられないものであった。外科医の知識の進歩,手術手技の改良,および合成代用血管や縫合材料のように工業の助けを借りた新しい手術材料の進歩の結果,血管外科は特殊領域として独自に開発されてきた。しかし,一般外科と血管外科を分離することはきわめて困難である。血管を結紮(けつさつ)したり,切り離したりして血管からの出血を止めるために外科医は多くの時間を使うし,悪性腫瘍の根治手術では血管の合併切除が行われること,外傷に際してしばしば血管の再建が必要なことなどを考えると,すべての外科が血管外科であるといっても過言ではない。今日,血管外科のおもな対象は大きな動脈や静脈の再建の問題であって,特殊な知識と経験を要する。
→外科
執筆者:三島 好雄
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