改訂新版 世界大百科事典 「血管移植」の意味・わかりやすい解説
血管移植 (けっかんいしょく)
vascular grafting
病変部を切除した後に欠損部の血管を補塡(ほてん)したり,血管の閉塞部に架橋するようにしてバイパスをつくったりするときに行われる血管の移植。前者は置換血管移植と呼ばれ,動脈瘤やきわめて限局した動脈閉塞,あるいは外傷などで行われる。一方,後者はバイパス血管移植と呼ばれ,多少範囲の広い瀰漫(びまん)性の動脈閉塞に対して行われる。代用血管としては,鎖骨下動脈あるいは腸骨動脈程度までのところでは合成代用血管(人工血管)が,それより末梢で体の運動により移植部位が屈曲するようなところには自家大伏在静脈が用いられている。人工血管はそのまま移植すると編目から相当量の出血があるので,これを防止するために,人工血管をゼラチン処理したり,編目のない不織布の人工血管が用いられている。また,静脈には弁があるので,中枢側と末梢側を反対方向にして移植したり,弁を切除してから移植する方法が行われている。一般に移植後5年間の開存率は70~80%で,成績はいちおう満足できる。静脈への血管移植の成績は悪く,一般に臨床に応用される段階ではない。
執筆者:三島 好雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報