調理や製菓でゼリー形成に用いるゲル化剤の一種。動物の骨や皮、腱(けん)などに含まれる硬タンパク質のコラーゲンを水とともに加熱して分解し、水溶性にした誘導タンパク質。良質の材料を用い精製度が高く、淡色透明のものが食用ゼラチンで、精製ゼラチンともいう。多少の不純物を含み、濃色不透明のものは膠(にかわ)という。原料にはおもにウシの骨、ブタの皮などが用いられる。原料を石灰水に浸して脂肪を除去したあと、蒸気釜(がま)で加熱してコラーゲンをゼラチン化し、不純物を除いて乾燥する。乾燥法により、薄板状と粉末状がある。
ゼラチンの主成分はタンパク質で、栄養源となるが、必須(ひっす)アミノ酸のうちトリプトファンを欠くため、これだけでは良質のタンパク質とはいえない。しかし、リジンが多いので、リジンの少ない小麦製品と組み合わせてとると、タンパク質としての利用価値が高くなる。
[河野友美・山口米子]
ゼラチンは冷水には膨潤するだけだが、温水には溶け、さらに冷却するとゼリー化する。この性質を利用して、料理や製菓では主としてゼラチンゼリーに用いられる。ゼリー状に固めるときの濃度は、固めようとするものにより差はあるが、通常2~3%である。まずゼラチンを水につけ、十分吸水させてから水を加えて加熱する。ゼラチンは60℃前後でよく溶ける。沸騰させると性質が変わり、ゼリー化しにくくなる。またゼラチン液は水素イオン濃度指数(pH)が4前後になると等電点となり、きれいにゼリー化しない。果汁や果物を加えてわずかに酸味のついたときは注意が必要である。また、タンパク質分解酵素を含む生(なま)のパイナップル、パパイヤ、キウイフルーツ、イチジクなどの果肉を混ぜると、タンパク質であるゼラチンは分解されてゼリー化しない。ゼラチンの凝固温度は低い。濃度にもよるが、ほぼ10℃以下にする必要がある。ゼリー化には数時間以上を要する。ゼラチンは、各種ゼリー菓子、寄せ物、冷製料理の飾りなどのほか、アイスクリームの安定剤、ハム、ソーセージの結着剤、一般のタンパク質性食品(魚肉練り製品など)の増量剤、食用以外には写真感光膜、固形培地、止血剤、薬用カプセル剤などにも使用される。
[河野友美・山口米子]
『安孫子義弘他編『にかわとゼラチン 産業史と科学技術』改訂版(1997・日本にかわ・ゼラチン工業組合)』
動物の骨,軟骨,皮膚,腱などにはコラーゲンという不溶性タンパク質が多量に含まれているが,これらの組織を長時間煮沸するとコラーゲンは変性して水溶性になり抽出されてくる。この誘導タンパク質をゼラチンと呼ぶ。可溶化の原因はペプチド鎖間の塩結合や水素結合が切断されてコラーゲン分子の立体構造が変化するためである。分子量は平均数万。グリシン,プロリン,ヒドロキシプロリンなどのアミノ酸を多く含むが,コラーゲンと同様にシスチン,システインを含まないことを特徴とする。冷水中では膨潤するだけであるが温水には溶け,再び室温にもどすと2~3%以上の濃度では弾性に富む寒天状ゲルになる。ゼリーや菓子など食品に使われる。抗原性がなくアナフィラキシーを起こさないので止血剤に用いられ,ほかに写真用乳剤,薬用カプセルなど用途は広い。濃色で多少不純物を含むものはにかわと呼ばれ,接着剤や墨汁の保護コロイドとして用いられる。
執筆者:宝谷 紘一
板状のものと粉末状のものとが市販されている。無色ないし淡黄色であるが,板状のものは淡色か透明なものがよい。200㏄の水にゼラチン10gの割合で煮溶かしてゼリー液とし,これを用いてゼリー,ババロア,ブラマンジェ,アスピックその他,冷たい菓子や料理をつくる。ゼラチンは弱火で煮ることがたいせつで,いきなり熱湯に入れると溶けにくくなる。成分は大部分がタンパク質であるが,必須アミノ酸のトリプトファンを含まないため,栄養的な価値は低い。
執筆者:平野 雄一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
コラーゲンを長時間熱水処理した際に得られる水溶性タンパク質の総称.不均質物質で分子量は1.5~25×104,または2~7×104 と推定されている.幼若動物のコラーゲンから調製した場合は,コラーゲン型らせんを形成している3本のポリペプチド鎖が別々にほどけたものが得られるが,多くの場合は2本または3本のペプチドが結合したものが一部に生じる.ペプチド鎖は,もはやコラーゲン型らせん構造のような規則性のある構造をとってはいない.写真用,接着用,食品用など応用範囲は広い.[CAS 9000-70-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…動物の皮,骨,腱,内臓膜を主要原料とし,これらを水とともに熱して,得られた抽出液を濃縮して乾燥したもの。原料の主成分タンパク質であるコラーゲン(骨の場合はオセインosseinと呼ばれる)が,加熱によって変性したものをゼラチンと呼ぶ。加熱抽出前に原料中のコラーゲン以外の成分をアルカリ処理や酸処理によって取り除く精製作業が行われる。…
※「ゼラチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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