行違(読み)ゆきちがい

精選版 日本国語大辞典 「行違」の意味・読み・例文・類語

ゆき‐ちがい ‥ちがひ【行違】

〘名〙
① すれちがうこと。行き交うこと。みちかい。ゆきちがえ。ゆきたがい。
河海抄(1362頃)六「みちかひにてたに 道の行ちがひなり」
② 行って会えないこと。入れちがいに出かけていて会いそこなうこと。ゆきちがえ。いきちがい。ゆきたがい。
青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋「お前さんと行違(ユキチガ)ひに、最う宿へ帰って居なさる時分だと爺さんは言ったが」
物事がちぐはぐになること。かみ合わないこと。手筈の狂うこと。ゆきちがえ。いきちがい。ゆきたがい。
※志都の岩屋講本(1811)下「此れは一通り尤なやうなことの、大きに行違ひな諺で」
※とはずがたり(14C前)一「今日はゆきちがひなれば、めのとが宿所、四条大宮なるにまかりぬ」

ゆき‐ちが・う ‥ちがふ【行違】

[1] 〘自ワ五(ハ四)〙
① こっちは行き、向こうは来る。すれ違って互いに違う方向に進む。行き交う。いきちがう。
蜻蛉(974頃)中「ゆきちがふ程に、いづくのぞやととひたれば、石山へ、人の御むかへにとぞこたふなる」
② 時間や経路が違って互いに出会わないでしまう。ゆきたがう。いきちがう。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉七「御帰洛遊ばさるるやう申し勧めんと為たりしに海陸の道行違(ユキチガ)ひ船より御下向に至りしかば」
③ 物事がうまくかみ合わない状態になる。手筈が狂う。いきちがう。
花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉中「其の書中に認めし所は武田口書と少しも行違(ユキチガ)ふ廉なく」
[2] 〘自ハ下二〙 ⇒ゆきちがえる(行違)

いき‐ちが・う ‥ちがふ【行違】

〘自ワ五(ハ四)〙
① こちらから行き、あちらから来る。ゆききする。ゆきかう。ゆきちがう。
※蜻蛉(974頃)上「さまざまなる人のいきちがふ」
② すれちがって、互いに異なる自分の方向に進む。わかれる。ゆきちがう。
史記抄(1477)八「使者相望と云は、さきの使と後の使といきちがいいきちがい相望ぞ」
③ 行き会わない。出くわさない。ゆきちがう。
※コリャード日本文典(1632)「Iqichīgota(イキチゴタ) モノデ アロズ」
相互連絡が不充分だったりして物事の手はずがくいちがう。しっくり合わない。ゆきちがう。

ゆき‐ちがえ ‥ちがへ【行違】

〘名〙
大つごもり(1894)〈樋口一葉〉下「行(ユ)きちがへに三之助
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一〇「先刻は僕も虫の居処の悪い時でとんだことばのゆきちげへから君にも怒りを起させたが」
④ 行く方向をまちがえること。

いき‐ちがい ‥ちがひ【行違】

〘名〙
① 両方で出掛けて行って会えないこと。すれちがい。ゆきちがい。
※大道無門(1926)〈里見弴〉隣人「まだお迎ひの出ないうちにお宅に着いちまいますから、行(イ)き違(チガ)ひになるやうなこともありますまいし」
② 相互の連絡が不十分だったりして手はずがくいちがうこと。ちぐはぐになること。ゆきちがい。

いゆき‐たが・う ‥たがふ【行違】

〘自ハ四〙 (「い」は接頭語) 入れ違いになるように行く。行き違う。
※古事記(712)中・歌謡「己(おの)が命(を)を 盗み死せむと 後(しり)つ戸よ 伊由岐多賀比(イユキタガヒ)(まへ)つ戸よ 伊由岐多賀比(イユキタガヒ)

ゆき‐たが・う ‥たがふ【行違】

[1] 〘自ハ四〙 =ゆきちがう(行違)(一)②
[2] 〘他ハ下二〙 たがいにすれちがうようにさせ、ゆきちがわせる。

ゆき‐ちが・える ‥ちがへる【行違】

〘自ア下一(ハ下一)〙 ゆきちが・ふ 〘自ハ下二〙 行く方向をまちがえる。まちがって行く。ゆきまちがえる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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