改訂新版 世界大百科事典 「被限定者不二一元論」の意味・わかりやすい解説
被限定者不二一元論 (ひげんていしゃふにいちげんろん)
インド哲学の主流であるベーダーンタ哲学の中の一学説。サンスクリットでビシシュタードバイタviśiṣṭādvaitaと呼ばれる。限定不二一元論とも訳される。バクティ(信愛)を強調する大衆的ナーラーヤナ崇拝をベーダーンタ哲学によって哲学的に基礎づけたラーマーヌジャ(1017-1137)が,シャンカラの不二一元論を厳しく批判して主張したもの。個我(アートマン)はブラフマンの身体,様相であるから,個我はブラフマンを本性としている。個我の身体,様相である物質世界も,究極的にはブラフマンを本性としている。換言すれば,ブラフマンは両実在によって限定されている。この限定されたブラフマン(被限定者)は両実在と本質的には同一(不二)であるという。
→ベーダーンタ学派
執筆者:前田 専学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報