ラーマーヌジャ(読み)らーまーぬじゃ(英語表記)Rāmānuja

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラーマーヌジャ」の意味・わかりやすい解説

ラーマーヌジャ
らーまーぬじゃ
Rāmānuja
(1017?―1137)

生年については異説もある。インドのベーダーンタ学派の哲学者。ビシュヌ教の一派シュリーバイシュナバ派の開祖。南インドのシュリーペルムブドゥールに生まれ、正規の教育を受けたのち、ベーダーンタ哲学者のヤーダバプラカーシャYādavaprakāśa(生没年不詳)の教えを受けた。しかし、師の学説に満足せず、ヤーダバのもとを去って、サンスクリットとタミル両語の学問を統合したナータムニNāthamuniの流れをくむヤームナYāmunaの学説を学んだ。ヤームナの後継者となった彼は、教義宣布のためインド各地を歴訪し、ビシュヌ派の神殿を復興して多くの信奉者を得た。主要な著作として、『ブラフマ・スートラ』に対する注釈書、ウパニシャッド自説によって解釈した『ベーダールタ・サングラハ』、『バガバッド・ギーター』に対する注訳書などがある。これら諸作品を通じて、彼はベーダーンタの一元論哲学と、民間のビシュヌ信仰との総合を試み、神への信愛の道を説いて下層階級に精神的救済の道を開いた。

[松本照敬 2018年5月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラーマーヌジャ」の意味・わかりやすい解説

ラーマーヌジャ
Rāmānuja

[生]?
[没]1137
インドの哲学者,宗教家。伝説では 1017年カーンチー近郊シュリーペルンブドールで生れたとされるが,生年を 55年とする説もある。制限不二論 (ビシシタ・アドバイタ ) を唱えた。ビシュヌ教の伝説を継承。初め不一不異説を主張したといわれるヤーダバプラーカーシャのもとに哲学を学んだが満足できず,ヤームナに師事し,その学説の秘義を伝授されたという。次いで行者として人々を教化し,シュリーランガムにおいてヤームナの跡を継ぎ,多くの信者を得,行者の王 Yatirājaと称された。インドの各地を旅行して布教に努め,多くのビシュヌ崇拝の神殿を復興あるいは建立し,多数の信徒をこの派へ改宗させた。もろもろの個我は最高神とは同一でなく,信仰を欠いた迷えるものである。個我はブラフマンの部分であり,認識し行動する。人は熱烈な信仰心をもって主宰神に対する帰依,祈念の行を実践するならば,その恩寵にあずかり解脱すると説いた。主著『シュリー・バーシヤ (聖注) 』 Srī-bhāṣya。

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