2種の酸化物からなる高次化合物。すなわち一般式aAmOn・bBxOyで表される化合物。ただしこの形式で書ける化合物であっても、AおよびBの金属イオンの半径がかなり違っていると、実際には小さいほうの金属にいくつかの酸化物イオンが配位したオキソ酸イオンを生成して、オキソ酸塩となっていることが多くあるので、これらは複酸化物には入れない。たとえば、スピネルMgAl2O4では、陰イオン成分の酸化物イオンO2-の立方最密パッキングよりなる格子の四面体型のすきまにMg2+、八面体型のすきまにAl3+の入り込んだMgO・Al2O3のような複酸化物である。これに対し、クロム酸カリウムK2CrO4は、K2O・CrO3と書けはするが、実際にはクロム酸イオンCrO42-を生成していて、K+とのイオン結晶であって、複酸化物ではない。また、たとえばFe3O4やPb3O4でも、FeFe2O4やPb2PbO4などのような複酸化物である。そのほか、たとえばチタン酸塩のように俗称されているチタン鉄鉱FeTiO3、チタン酸バリウムBaTiO3でも、メタチタン酸イオン[TiO3]2-はみいだされず、Fe2O3と同じような構造であって複酸化物である。このような例は比較的多く、 の化合物などはいずれも複酸化物である。
[中原勝儼]
2種類の酸化物からできている高次酸化物のうち,構造上オキソ酸イオンの存在が認められないものをいう.3種類の酸化物の場合は三重酸化物(triple oxide)である.一般に,2種類の金属が共存する酸化物において,金属イオンの半径にあまり差のない場合には,酸化物イオンは特定の金属イオンに属することはない.このような酸化物を複酸化物という.たとえば,三酸化チタンマグネシウムMgTiO3,四酸化三鉄Fe3O4(FeⅡO・FeⅢ2O3),四酸化ニッケル二鉄Fe2NiO4.金属のイオン半径にある程度の差があるときは,小さいほうの金属イオンの周囲に数個の酸化物イオンが配位してオキソ酸イオンが形成される.たとえばクロム酸カリウムK2CrO4.一般に,アルミン酸塩,チタン酸塩,ジルコン酸塩とよばれているものも,多くは複酸化物である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…また一酸化炭素CO,一酸化二窒素N2Oなどのように水と作用しない酸化物は不動酸化物inert oxideといっている。 2種以上の陽性成分を含む酸化物は複酸化物double oxideという。たとえば,CaTiO3,AlYO3などがそうである。…
※「複酸化物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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