イオンを球体とみなした場合のその半径.有効イオン半径(effective ionic radius)ともいう.X線回折による結晶構造からはイオン間距離を求めることはできるが,これは陰陽両イオン間あるいは同種イオン間の距離であって,イオン半径の絶対値は厳密には求められない.そこで多くの化合物の構造から求められるイオン間距離をイオン半径の和とみなし,一方,塩類溶液の分子屈折あるいは陰イオンが最密構造をしている化合物から得られるイオン半径とを比較して,O2- あるいは F- のイオン半径を決定し,これを基準としてほかのイオン半径を求める.イオン半径は,
(1)イオンの配位数,
(2)電子スピン状態,
(3)結合の共有性,
(4)両種イオン間の斥力,
により影響される.イオン半径の表はV.M. Goldschmidt(ゴルトシュミット),L.C. Pauling(ポーリング),Zachariasen,Ahrens,Slater,Fumiらにより提出されているが,新しいものほど上述の因子が考慮され,実験値との一致がよくなっている.付表(巻末)にR.D.Shannonの結果を示した.ここでは,六配位の O2- および F- のイオン半径を,それぞれ0.140 nm および0.133 nm として,陰陽両イオンの配位数,第一列の遷移元素のスピン状態を考慮して求めている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
イオンを球状とみなしたとき,その半径をイオン半径という。食塩は,Na⁺とCl⁻の二つのイオンが格子状に配列してイオン結晶をつくっている。このイオン結晶において,球状のイオンが相互に接触していると仮定すると,その格子間隔はNa⁺とCl⁻のイオン半径の和になる。したがって,今ある一つのイオン半径の絶対値がわかると,他のイオン半径は格子間隔とその値とから計算することができる。V.M.ゴルトシュミットは1927年に,さきにフッ化物および酸化物の光学的性質から求められたF⁻=1.33Å,O2⁻=1.32Åを用いて,大半のイオン半径を計算し,現在でもしばしば用いられる。一方,L.ポーリングは,量子力学に基礎を置いてイオン半径を計算し,ゴルトシュミットの値とよく一致した結果を得た。その代表的なイオン半径の値は表のようになる。なお溶液中のイオンの運動に,ストークスの法則を適用することによってイオン半径が求められるが,一般に水溶液中ではイオンは水和していて表の値と一致しない。
執筆者:井口 洋夫
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一般にイオン結晶は一方のイオンが他種のイオンで囲まれるような構造をしており,2種のイオンはクーロン力によって電気的に引き合い,それぞれの電子雲が重なることによって起こる反発力とつり合ってイオン間の距離が決められる。この電子雲の広がりを球形とみなしその半径をイオン半径と呼ぶとき,イオン半径は各イオンそれぞれに特有な値となる。イオン結晶はその構成イオンのイオン半径の大小によって格子の型が決まる。…
※「イオン半径」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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