酸化物(読み)サンカブツ(英語表記)oxide

翻訳|oxide

デジタル大辞泉 「酸化物」の意味・読み・例文・類語

さんか‐ぶつ〔サンクワ‐〕【酸化物】

酸素と他の元素との化合物

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精選版 日本国語大辞典 「酸化物」の意味・読み・例文・類語

さんか‐ぶつサンクヮ‥【酸化物】

  1. 〘 名詞 〙 酸素と他の元素との化合物。希ガス元素を除くほとんどすべての元素について知られている。酸性酸化物両性酸化物塩基性酸化物など。〔舎密開宗(1837‐47)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化物」の意味・わかりやすい解説

酸化物
さんかぶつ
oxide

酸素のみを陰性成分として含む化合物をいう。したがって、フッ化酸素OF2のように酸素が陽性成分となっているものや、オキソ酸塩(たとえばNa2SO4)のように他の元素と複合して陰性成分となっているものは、酸素を含んでいても酸化物とはいわない。たとえば地球上にきわめて広く存在する水H2Oは水素の酸化物であり、岩石の主要成分の二酸化ケイ素SiO2はケイ素の酸化物、赤さびの成分である酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3は鉄の酸化物である。

[中原勝儼]

酸化物の分類

酸化物のうち、酸と反応して塩をつくる酸化物を塩基性酸化物といい、塩基と反応して塩をつくる酸化物を酸性酸化物、酸にも塩基にも反応してそれぞれの塩をつくるような酸化物を両性酸化物という。たとえば、多くの非金属元素の酸化物(二酸化炭素CO2、二酸化硫黄(いおう)SO2など)や、遷移元素の高酸化数酸化物(酸化クロム(Ⅵ)CrO3酸化マンガン(Ⅶ)Mn2O7など)は酸性酸化物である。

  CO2+NaOH―→NaHCO3
  SO2+KOH―→KHSO3
  CrO3+2KOH―→K2CrO4+H2O
酸性酸化物は水と反応すると酸を生ずるので、酸化物を酸の無水物とみて、たとえばCO2を無水炭酸、SO2無水亜硫酸、CrO3を無水クロム酸など(上記いずれも正式名称ではない)とよぶこともある。

 また一般に金属の酸化物は塩基性酸化物で、次のように反応する。

  K2O+H2SO4―→K2SO4+H2O
  CaO+2HCl―→CaCl2+H2O
 周期表上、非金属元素のグループと金属元素のグループの境界領域にくる元素で、たとえばアルミニウム亜鉛スズ、ヒ素、アンチモンなどの酸化物は両性酸化物である。たとえば酸化亜鉛ZnOは、
  ZnO+2HCl―→ZnCl2+H2O
  ZnO+2NaOH+H2O
    ―→Na2[Zn(OH)4]
のように酸とも塩基とも塩をつくる。

 酸、塩基と反応しない酸化物は中性酸化物ということがある。たとえば水、一酸化炭素CO、一酸化窒素NOなどがそうである。

 酸化物のうち、陰性成分として過酸化物イオンO22-ないしは-O-O-を含むものを過酸化物といっている。たとえば過酸化水素H2O2、過酸化ナトリウムNa2O2などがそうである。またO2-を含む化合物は超酸化物、たとえばKO2超酸化カリウムとよばれ、O3-を含む化合物はオゾン化物、たとえばKO3はオゾン化カリウムとよばれる。

[中原勝儼]

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改訂新版 世界大百科事典 「酸化物」の意味・わかりやすい解説

酸化物 (さんかぶつ)
oxide

酸素と他の元素との化合物のうち,酸素を-2価の状態で含む化合物をいう。したがって二フッ化酸素OF2のように+2価の成分となっているときは酸化物ではない。また広い意味では酸化物に入るが,H2O2やNa2O2などのようにO22⁻として存在するときは過酸化物であり,同様にO2⁻として存在するときは超酸化物,O3⁻ではオゾン化物で,酸化物とは別に扱う。

 酸素は電気陰性度が高く,反応性が大きいので,貴ガス元素の一部を除くほとんどの元素と化合物をつくるが,これらのうち比較的電気陰性度の高い,周期表右上部にある典型的な非金属元素の酸化物は,共有性の分子からなることが多く,一般に水に溶けて酸を生ずる。たとえば五酸化二窒素N2O5,三酸化硫黄SO3などがそれで,水に溶けるとそれぞれ硝酸HNO3,硫酸H2SO4などとなる。したがって,これらは酸性酸化物acidic oxideといっている。また逆に電気陰性度がきわめて低く,電気陽性の高い,すなわち周期表左下方の金属元素の酸化物ではO2⁻を含むイオン結晶をつくりやすく,たとえば酸化ナトリウムNa2Oや酸化カルシウムCaOでは,水に溶かすと強い塩基性を示すので塩基性酸化物basic oxideといっている。これらに対し上記のような非金属元素と金属元素との中間にある元素では,非金属元素でも電気陰性度が低くなり,金属性が増すと,その酸化物は単分子からなるよりも巨大分子をつくりやすくなり(水に難溶性となる),酸性は弱まってくるし(Sb2O5,TeO3など),金属元素でも電気陰性度が増してくると酸素との結合はイオン性を減じ,共有性が増してきて塩基性が減り,水に溶けにくくなり,酸性が増す。それが極端になったとき,たとえばAl2O3,ZnO,PbO,SnOなどでは,酸と塩基の中間的性質,すなわち強酸に対しては塩基,強塩基に対しては酸として働くので,両性酸化物amphoteric oxideといっている。一つの元素でいくつかの酸化数の酸化物をつくるときは,高酸化数酸化物のほうが酸性が強く,低酸化数のほうが塩基性が強い。たとえばクロムCrでは,CrO3の水溶液は強酸であるが,CrOは塩基性であり,それらの中間の酸化数のCr2O3は両性である。また一酸化炭素CO,一酸化二窒素N2Oなどのように水と作用しない酸化物は不動酸化物inert oxideといっている。

 2種以上の陽性成分を含む酸化物は複酸化物double oxideという。たとえば,CaTiO3,AlYO3などがそうである。Fe3O4やPb3O4などのように,化学式からは単なる酸化物であっても,実際にはFe(Fe2O4や(Pb2PbO4のように2種の陽性成分があるものも複酸化物である。

 酸化物は一般に普通の酸化数よりも高いときは多く酸化剤として働き(たとえばMnO2,PbO2,RuO4,N2O5など),低いときは還元剤として働く(たとえばCO,SO2,CrOなど)。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化物」の意味・わかりやすい解説

酸化物
さんかぶつ
oxide

酸素と他元素との二元化合物の総称。このうち酸と作用して塩をつくるものを塩基性酸化物,塩基と作用して塩をつくるものを酸性酸化物,酸,塩基いずれにも溶解して塩をつくるものを両性酸化物という。水は中性の酸化物である。過酸化水素のように -O-O- 基を含むものを過酸化物という。1つの元素がいくつかの酸化物を形成するとき,その元素の酸化状態が最高を示す酸化物が最も酸性である。たとえばクロムの酸化物 CrO は塩基性,Cr2O3 は両性,CrO3 は酸性である。金属元素は他の化合物では示すことのない酸化状態の酸化物を形成することが多い。たとえば MnO2 ,AgO ,PbO2 などがその例である。これらはイオン性の酸化物で,非化学量論的な組成を示すことが多い。そのほか比較的不活性な酸化物もあり,N2O ,CO ,MnO2 などは酸,アルカリに不溶である。 MnO2 が塩酸に溶ける反応は酸塩基反応ではなく酸化還元反応である。

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化学辞典 第2版 「酸化物」の解説

酸化物
サンカブツ
oxide

酸素と希ガス以外のほかの元素との化合物.元素と酸素とを直接作用させるか,水酸化物や酸素酸塩を強熱して得られる.水に溶けたときに示す性質によって,酸性酸化物中性酸化物塩基性酸化物,および両性酸化物に分けられる.一般に,金属の酸化物は塩基性酸化物であり,非金属の酸化物は酸性酸化物である.普通の酸化数より高い酸化数をもつ金属酸化物は酸化剤としてはたらき(MnO2,PbO2),低い酸化数をもつ酸化物は還元剤としてはたらく(CO,SO2).また水と作用しないものを不動酸化物といい,金属の腐食防止に利用される.酸化物のなかには半導体として重要な用途をもつものが少なくない.[別用語参照]過酸化物超酸化物

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百科事典マイペディア 「酸化物」の意味・わかりやすい解説

酸化物【さんかぶつ】

酸素と他の元素との化合物。希ガス元素以外のほとんどの元素の化合物が知られている。塩基と作用して塩をつくるものを酸性酸化物,酸と作用して塩をつくるものを塩基性酸化物,中性のものを中性酸化物,どちらとも作用して塩をつくるものを両性酸化物という。一般に金属の酸化物は塩基性酸化物,非金属の酸化物は酸性酸化物である。

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