西儒耳目資(読み)せいじゅじもくし(その他表記)Xī rú ěr mù zī

改訂新版 世界大百科事典 「西儒耳目資」の意味・わかりやすい解説

西儒耳目資 (せいじゅじもくし)
Xī rú ěr mù zī

イエズス会宣教師,フランス人ニコラ・トリゴーNicolas Trigault(中国名,金尼閣)の作った韻書。明末の天啓6年(1626)に出版された。トリゴーは,マテオ・リッチの表記法に近いローマ字を用い,五つの〈自鳴〉字すなわち母音文字と,20の〈同鳴〉字すなわち子音文字とによって,中国語の音韻体系を簡潔に記述した。西洋人の中国語学習者(西儒)にとっての手助け(耳目資)を意図したものではあるが,当時としては驚くほど精緻なものであった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西儒耳目資」の意味・わかりやすい解説

西儒耳目資
せいじゅじもくし
Xi-ru er-mu-zi

中国,明末にフランスのイエズス会宣教師ニコラス・トリゴー (中国名,金尼閣) が書いた中国語の音韻書。天啓6 (1626) 年刊。同5年山西省絳 (こう) 県で同地の韓雲を助手としてマテオ・リッチがつくったローマ字による漢字の表音方式を改良,表音文字で標記した初めての中国語の韻書として,陝西省 涇陽 (けいよう) の王徴の校訂を経て出版された。音韻分析のために「反切」という手段しかもたなかった中国語に,より簡明な方法を提供し,中国音韻研究史上,重要な価値をもつ。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の西儒耳目資の言及

【中国学】より

…17世紀の初頭以来,中国に関する研究をすすめたのは,イエズス会所属の会士たちであり,とくに顕著な成績を挙げたのはフランスの会士たちであった。たとえばトリゴーN.Trigault(1577‐1628)は《西儒耳目資》という中国語発音辞典をつくり,1626年に杭州で出版した。本書は中国語で書かれたものであるが,漢字はアルファベットで転写されていて,中国の学者を驚倒させ,中国に音韻学をおこすのに貢献したのであった。…

※「西儒耳目資」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android