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反切 はんせつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

反切
はんせつ

漢字の音を示すために用いられる表音法の一つ。「A,BC (ないし) 」の型で表されるもので,問題のA字 (反切帰字) の音を,Aと声母 (紐〈チュウ〉ともいう。語頭子音) の同じB字 (反切上字,父字) と,Aと韻母を等しくするC字 (反切下字,母字) の組合せで示す。たとえば,「東」の字の音を知るには,「東,徳紅ノ反」から「徳」tək のt-をとり,「紅」 ɦuŋ の-uŋ とを組合せれば,「東」= tuŋ が得られるわけである。単音文字をもたない中国で,漢字の音を示すのに便利な方法として近年まで用いられた。日本では五十音図を用いて反切を行う「仮名反 (かながえし) 」が行われた。上の例でいえば,「トク」 (徳) からタ行子音を求め,それに「コウ」 (紅) の子音を除いた部分を組合せて「トウ」 (東) を導き出した。

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デジタル大辞泉の解説

はん‐せつ【反切】

ある漢字字音を示すのに別の漢字2字の音をもってする方法。すなわち、上の字の頭子音(声母)と下の字の頭子音を除いた部分(韻母)とを合わせて1音を構成するもの。例えば、「東」の子音は「徳紅切」で「徳」の声母[t]と「紅」の韻母[oŋ]とによって[toŋ]とする類。かえし。

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百科事典マイペディアの解説

反切【はんせつ】

中国音韻学の術語。呉の孫炎〔?-260?〕が創始したと伝える。漢字の1字(1音節)の音を頭子音と母音の二つに分けて示す。たとえば〈東〉(tung,ピンインではdong)は〈徳紅反(徳紅切)〉とあれば,徳で声母t-を,紅で韻母-ungを表し,2字でtungと発音すべきことを示す。
→関連項目字鏡集切韻

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世界大百科事典 第2版の解説

はんせつ【反切 fǎn qiè】

中国語の伝統的標音法。たとえば音が未知である被注字(被切字,帰字)〈東〉に対し既知の2字〈徳〉〈紅〉を用いて,〈徳紅反〉または〈徳紅切〉のように注音する形式をいう。唐代までは〈……反〉,宋代以降は〈……切〉の形をとる。〈徳紅反(切)〉において,〈徳〉を反切上字(切上字),〈紅〉を反切下字(切下字)と呼び,反切上字が声母を,反切下字が声調を含めた韻母を示す。上の反切は,tək4u1→tu1(推定音はカールグレンによる。

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大辞林 第三版の解説

はんせつ【反切】

ある漢字の字音を、それと声(頭子音)の同じ字(父字)と韻の同じ字(母字)各一字を選び、上下に並べ二字の組み合わせによって示すこと。例えば、「三」の字音を「思甘切」のように表し、「思」の頭子音 [s] と「甘」の韻 [am] とで [sam] を表す類。なお、この原理を日本語に応用し、日本語の語形変化について説明することも行われた。かえし。切韻。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

反切
はんせつ

反音(はんおん)」「翻切(ほんせつ)」「切語(せつご)」などともいう。中国で、各字の字音を表示するために漢字二字の字音を組み合わせて示す方法。たとえば、「東」は反切「徳紅反」で示され、その上字(父字ともいう)「徳(tk)」の頭子音t-と、下字(母字ともいう)「紅(o)」の韻および四声-oとを組み合わせて、帰字「東」の字音toを導くものである。中国において、反切によって字音が示されたもっとも古い例は、2世紀の服虔(ふくけん)・応劭(おうしょう)の『漢書注』とされ、それ以前は「東音凍」とか「東読若凍」のように、同音の漢字で示されていた。反切が発明されてからは便利なため、近年に至るまで主たる表音法として利用された。なお、唐代までは「何何」が用いられ、宋(そう)代以後「何何」と「切」字に改められた。日本でも、この反切が字音学習に大いに利用されたが、とくに五十音図が発明されてからは、それによって反切が行われるようになった。明覚(めいかく)の『反音作法』(1093)はその方法を詳論したものである。たとえば「蒙 莫紅反」において、「莫(マク)」の「マ」と「紅(コウ)」の「ウ」とを取り出して結合させるが、その際、子音を表す「マ」を、下字の音「コウ」の捨てたほうの仮名「コ」と五十音図で同韻となるマ行の「モ」に変換して、帰字「蒙」の音「モウ」を求める方法である。反切上字から単音(この例ではm-)を導き出すために、五十音図が巧妙に利用されたものである。なお、日本で利用された反切の三大典拠は顧野王撰(こやおうせん)『玉篇(ぎょくへん)』(梁(りょう)大同9年〈543〉ごろ)、陸法言(りくほうげん)等撰『切韻』(隋(ずい)仁寿元年〈601〉)、玄応(げんのう)撰『一切経音義』(唐貞観9年〈635〉~龍朔3年〈663〉の間)と考えられる。[沼本克明]
『明覚著『反音作法』(『国語学大系 第四巻』所収・1936・厚生閣) ▽小西甚一著『文鏡秘府論考 研究篇 上』(1948・大八洲出版) ▽馬渕和夫著『日本韻学史の研究』全三巻(1962~65・日本学術振興会)』

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世界大百科事典内の反切の言及

【音韻学】より

…後漢になって経典の研究が進むにつれ,語の解釈を音の同一ないし近似に求めるという試みが行われたが,それは音の分析についてはまだはなはだ不完全であった。やがて音節構造の分析が進んで,反切という表音技術が発明された。これはある語の音節構造を表すのに,その語の頭子音と同じ頭子音をもつ他の常用文字と,その語の韻と同じ韻をもつ他の常用文字の2文字の組合せでその語の音韻を表したものである。…

【字音】より

…Iを声母(声類),MVF/Tを韻母(韻類)と呼ぶ。 韻書では声母と韻母の組合せで音を示す〈反切(ハンセツ)〉が伝統的である。東/tʌu1/を徳/tʌk(4)/紅/ɣʌu1/の反(ハン),すなわちt+ʌu1=tʌu1とする等である。…

※「反切」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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