言付(読み)いいつける

精選版 日本国語大辞典 「言付」の意味・読み・例文・類語

いい‐つ・ける いひ‥【言付】

〘他カ下一〙 いひつ・く 〘他カ下二〙
物事を人に頼む。命じる。
(イ) 言って頼む。ことづける。付託する。
大和(947‐957頃)一六八「宮の御かへりも人々の消息も、いひつけて又遣りければ」
(ロ) 目下の者に命じる。申し付ける。また、物を注文する。
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「ソレ チャウチャク セイト iytçuqeraruru(イイツケラルル) ホドコソアレ」
※俳諧・曠野(1689)員外「むく起に物いひつけて亦睡り〈野水〉」
② その人にとって好ましくないことを他に告げ知らせる。
(イ) 無実のことや不都合なことを人に言い知らせる。作りごとをして言いふらす。
※宇津保(970‐999頃)忠こそ「なに事をいひつけんと、眼をつけて見給へど、いひつくべき事もなし」
(ロ) 人の秘密や過失、行ないなどをこっそり人に告げ知らせる。密告する。
怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉一一「此間孝助が殿様に云付(イイツケ)るのを聞て居たら」
あだ名などを付ける。命名する。
※栄花(1028‐92頃)日蔭のかづら「大宰相の君などいふ人、おばおとどなどいひつけ給ひ」
④ いつも言っている。言い慣れる。
徒然草(1331頃)七八「ここもとにいひつけたることくさ、物の名など」
⑤ 叱りつける。きびしく言いきかせる。注意する。
※虎明本狂言・竹の子(室町末‐近世初)「歌を一首つつよませて、そのうへでいひ付うと思ふが汝はよまふか」

いい‐つけ いひ‥【言付】

〘名〙
① 目下の者などに対する命令指示
地蔵菩薩霊験記(16C後)七「床の下には色々の鬼ども、〈略〉云付(いヒつケ)をぞ待居たり」
② 昔から言われてきている習慣。言い習わし。
史記抄(1477)三「出家せられつれば禅閤と云と云説あり。是は日本の云つけであらうぞ」
告げ口。密告。
※家(1910‐11)〈島崎藤村〉上「オイ、稲垣君、〈略〉今、細君が愁訴(イヒツケ)に来たぜ」

いい‐つ・く いひ‥【言付】

[1] 〘自カ四〙
言葉をかける。話しかける。言い寄る。
古今(905‐914)離別・四〇五・詞書「道にあへりける人の車に物をいひつきて」
② 男女が親しい間柄になる。関係ができる。
※大和(947‐957頃)一〇三「のちはかへりごとはして、いひつきにける」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒いいつける(言付)

いっ‐つ・ける【言付】

〘他カ下一〙 「いいつける(言付)」の変化した語。
※雑俳・柳多留‐四(1769)「女房はそばからいしゃへいっつける」
※あらくれ(1915)〈徳田秋声〉五「阿母(おっか)さんに言告(イッツ)けてやるぞ」

ゆい‐つ・ける ゆひ‥【言付】

〘他カ下一〙 ゆひつ・く 〘他カ下二〙 (「いいつける(言付)」の変化した語) 物事を命じる。命令する。
※土井本周易抄(1477)四「各臣下にゆい付てさする程に、失も得も恤がないぞ」

いい‐つか・る いひ‥【言付】

〘他ラ五(四)〙 言い付けられる。命じられる。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉四「いいつらの皮ダ。とんだ加役をいいつからア」

い‐つ・ける【言付】

〘他カ下一〙 「いいつける(言付)」の変化した語。
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三「又車屋の神さんにいつけられますよ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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