習慣(読み)シュウカン(英語表記)habit

翻訳|habit

デジタル大辞泉 「習慣」の意味・読み・例文・類語

しゅう‐かん〔シフクワン〕【習慣】

長い間繰り返し行ううちに、そうするのがきまりのようになったこと。「早寝早起きの習慣
その国やその地方の人々のあいだで、普通に行われる物事のやり方。社会的なしきたり。ならわし。慣習。「盆暮れに贈り物をする習慣がある」
心理学で、学習によって後天的に獲得され、反復によって固定化された個人の行動様式
[用法]習慣・慣習――「土地の習慣(慣習)に従う」「これまでの習慣(慣習)を破る」など、ならわし・しきたりの意では相通じて用いられる。◇「習慣」は「毎朝のジョギングを習慣にしている」「欧州ではチップの習慣がある」など、個人的な事柄にも、社会的な事柄にも使う。◇「慣習」は「村の慣習として、祭りの当番は持ち回りにする」「慣習法」など、社会的に行われているものをいう。◇類似の語「しきたり」「ならわし」は、「町のしきたり」「世のならわし」のように「慣習」とほぼ同じ意。
[類語]慣習俗習病み付き習性常習習癖悪癖悪習奇癖病癖性癖惰性くせ習い習わし

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精選版 日本国語大辞典 「習慣」の意味・読み・例文・類語

しゅう‐かんシフクヮン【習慣】

  1. 〘 名詞 〙
  2. いつもそうすることが、ある人のきまりになっていること。ならわし。くせ。慣習。
    1. [初出の実例]「その習慣する処を慎むこと、人を教るの極意なり」(出典:嚶鳴館遺草(1835)三)
    2. [その他の文献]〔大戴礼‐保傅〕
  3. ある国、地方、団体などで、その中の人々があたりまえの事として行なっている事柄、やり方など。社会的、共同体的なしきたり。風習慣例。慣習。
    1. [初出の実例]「其天然と思ひしもの、果して習慣なることあり」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉緒言)
  4. ( ━する ) ある事柄になれること。なれ親しむこと。〔新撰字解(1872)〕
    1. [初出の実例]「四馬を御するは、家に多く馬を蓄ふものに非れば、其術に習慣し難きゆへ」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉二)
    2. [その他の文献]〔応劭‐風俗通序〕
  5. 心理学で、ある刺激とそれに対する反応との系列がしばしば反復され、その結果として獲得された刺激と反応の自動的な連合をいう。反応は反射的に引き起こされ、かつ比較的に不変性をもつ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「習慣」の意味・わかりやすい解説

習慣
しゅうかん
habit

同じ状況のもとで繰り返された行動が、状況に応じて安定化し、自動化されて遂行される場合をさしていう。日常の行動で、たとえば戸を開けるとか、箸(はし)を使うとか、着替えをするとか、定時的に反復するうちに、そのときの状況に適応して、行動が一定のテンポで自動的に経過するようになることである。

小川 隆]

行動の定型化と安定化

習慣は行動の具体的動作面でいわれるだけでなく、言語習慣、思考習慣などというように象徴的な面についても用いられるし、また個人的行動に限らず、社会的、文化的行動についてもいわれる。「習俗」「しきたり」「習わし」などという定型化した行動は、習慣の一種である。

 行動の反復により、その行動は鋭敏化sensitizationする場合と、慣れhabituationで低下する場合とがあり、反射などの生得的行動では、反復の初期には鋭敏化が、後期には低下が認められる。習慣は習得的行動であってこれとは異なり、安定化が特徴である。

 幼児が箸を持つことを習い出した当初はぎごちなく、不適切な持ち方をするが、反復練習するうちに、適切な仕方で、一定のテンポでできるようになる。つまり、習得した行動が繰り返されるうちにむだが省け安定した場合が、習慣である。安定化は行動の定型化によって遂行され、エネルギー消耗を避ける意味で有効であり、また、社会的習慣としての定型化した行動は、それを通じてコミュニケーションを円滑にするうえに役だつことにもなっている。外国人の行動、違った地方の人の行動が、その国、その地方の習慣と異なる場合がこのことを如実に示している。しかし習慣は、形成時、一定の要求をその状況に応じて実現する行動として習得されても、「癖」として定型化し、状況が変化しても自動化した行動が固執されることがあり、かならずしも合理的適応性を示すものではない。

[小川 隆]

習慣形成

習慣形成は、早い時期に行われることがたいせつであるとされている。このため、幼児期が習慣形成の適時期とされ、家庭・幼稚園・保育所での教育の課題となる。なかでも「基本的生活習慣」とよばれる食事睡眠排泄(はいせつ)、着脱衣、清潔についての習慣と、「社会的習慣」とよばれる挨拶(あいさつ)、後かたづけ、物をたいせつにする、生活のルールを守るなどの習慣の形成が目ざされる。また、安全を守る習慣も重視されてきている。習慣形成には、やりたくないことを強要してはいけないが、同じように繰り返し行うようにすることが必要である。できるだけ例外を少なくする。また、子供の周囲にいるもの、とくに親が、形成したい習慣について、つねによいモデルになっていることが重要である。子供は、模倣しながら学習する特性をもっており、習慣形成においても親の日常的生活態度が強い影響を及ぼす。

 年齢が高くなるにしたがい、それぞれの習慣的行動のもつ意味を理解するようにすることが望まれる。よく噛(か)んで食べるという食事の習慣は消化をよくするためのものであるなどである。また、子供が自分から進んで一定の習慣的行動をとるよう、やろうとする気持ちをおこさせることが必要である。このためには、よくできた場合、賞賛してやるなどのくふうをする。

 習慣形成によって、自分の身の回りのことが自分でできるようになり、自立心が育つとともに、社会的な適応もでき、社会化された個人の確立に役だつ。しかし、親の養育態度が過保護ないし過干渉、放任などのため、適切な習慣形成が阻害される危険が大きい。

[岡田正章]

『山下俊郎著『幼児心理学』(1961・朝倉書店)』『岡田正章・加藤照子編『生活習慣』(1977・チャイルド本社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「習慣」の意味・わかりやすい解説

習慣
しゅうかん
habit

後天的に獲得された個体の反応様式。刺激に対して自動的に解発されやすく,変化の少い一定の形をもつことが多い。生体のもつ多くの種類の反応が習慣になりうるが,典型的なものは種々の筋運動で,これらは条件づけや知覚運動学習により習慣化されると考えられる。ある動機のもとで獲得された習慣は,のちにその動機が消失しても,他の動機のもとで解発される。これを習慣の機能的自律性という。通常,ある反応が習慣といわれるまで自動化し,定型化するためには,かなり多数回の反復が必要とされる。動物の日常行動を支配しているものは,下等動物では本能であるのに対して,高等動物になるほど習慣の比重が大きくなるといわれる。なお,特定の民族や社会が,歴史的に獲得した定型的行動様式を慣習といって,個人の習慣と区別することもある。

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百科事典マイペディア 「習慣」の意味・わかりやすい解説

習慣【しゅうかん】

経験によって後天的に獲得され,反復によって固定された個人の行動様式のこと。英語habit,ドイツ語Gewohnheitなどに相当。〈第二の天性〉ともいわれ,身体的なくせ等のほか,考え方や感じ方等,精神的な傾向をもさす。生得的な本能や反射的行動とは区別され,また特定の民族や社会が歴史的に獲得した慣習を〈集団の習慣〉という場合もある。

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普及版 字通 「習慣」の読み・字形・画数・意味

【習慣】しゆうかん

ならわし。

字通「習」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の習慣の言及

【エートス】より

…ウェーバーによれば,この行為性向は次の三つの性質をあわせもつ。(1)ギリシア語の〈習慣(エトス)〉に名称が由来していることからうかがえるように,エートスは,それにふさわしい行為を実践するなかで体得される〈習慣によって形作られた〉行為性向である。〈社会化〉によって人々に共有されるようになった行為パターンといってもよい。…

【慣習】より

…社会規範と同義とされることもある。個人の習わしとしての習慣habitとは区別される。習慣は,たんにその人独自の生活上のユニークな行動パターンであるにすぎないが,慣習は,大多数の集団成員に共通して見いだされる特徴的なふるまい方であって,合理的な根拠がない場合でも正当な行為型として皆に容認・支持される。…

【習俗】より

…folkwaysはアメリカの社会学者W.G.サムナーの造語で,彼は慣習customを習俗folkwaysと良俗あるいは道徳的慣行moresとに分けることを主張した。彼によれば,生存の欲求を充足させようとする努力は試行錯誤の末に一定の行動方式を選択するようになり,習慣habitが生じる。これが集団内で一致するようになると習俗となり,さらにこれに社会福祉に関する信念が加わって良俗(モーレス)が生じる。…

※「習慣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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