誘電体多層膜(読み)ゆうでんたいたそうまく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「誘電体多層膜」の意味・わかりやすい解説

誘電体多層膜
ゆうでんたいたそうまく

レンズミラーなどの光学部品の表面に、反射防止または完全反射を目的に作成する多層の光学薄膜反射防止膜がない場合、レンズ材質の屈折率n1を1.5、空気の屈折率n0を1.0とすると、垂直入射時に全光量の約4%の光が反射してしまう。これがレンズの各面(入射面および射出面)で繰り返されるため、レンズとミラーを多用する光学系では、最終光量が大幅に低減してしまう。これを避けるためにレンズと空気の間に誘電体などの光学的に透明な薄膜(屈折率n2n0n2n1のように)を蒸着などで作成し、その厚さを光路差が半波長になるようにして、入射光と反射光の干渉により反射光をほとんどなくすことができる。この効果をいくつかの波長と入射角に適用できるように多数の膜で設計して、誘電体多層膜を作成する。反射防止とは逆にすべて反射させる膜も作成できる。カメラや望遠鏡などのレンズや反射鏡の表面に蒸着されている。

[山本将史 2022年7月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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