改訂新版 世界大百科事典 「護国女太平記」の意味・わかりやすい解説
護国女太平記 (ごこくおんなたいへいき)
江戸中期の実録体小説。筆者未詳(《甲子夜話》19巻には,赤穂浪士一件の際,播州へ隠密として遣わされた御小人目付とする)。成立年未詳(1717年(享保2)の序文をもつ書もあるが,内容の上では享保2年以降の事実を含んでいる)。15巻または20巻。いわゆる柳沢騒動の実録体小説中,もっとも成長をとげたもの。5代将軍徳川綱吉が柳沢吉保の子吉里をわが子と信じて,6代将軍にしようとしたのを,正室鷹司氏信子が夫綱吉を殺害,未然に防いで自害したのが書名の由来である。実際には麻疹と疱瘡で没したにもかかわらず,相次いで急逝したため種々の風説が当時よりあり(《鸚鵡籠中記》),それらを核に,《日光かんたんの枕》《増補日光邯鄲枕》《日光霊夢記》《元宝荘子》《宝永太平記》などの実録体小説が出現した。《増補日光邯鄲枕》では,井伊掃部頭を善玉,柳沢吉保を悪玉としているが,その作者自序には井伊家に仕えていたとある。
→柳沢騒動物
執筆者:延広 真治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報