天然痘の俗称。種痘が普及するまで、疱瘡はもっとも恐ろしい厄病とされていた。後遺症として痘痕(あばた)が残りやすいので、高知県などでは「どんな器量よしでも厄(疱瘡)が済むまではなんともいえない」といって恐れ、軽く済むように祈願した。沖縄の宮古(みやこ)島では疱瘡前の生児は預かり者だといい、これを経過して初めてわが子になったと伝えている。疱瘡を人生儀礼のごとく扱っている地方もある。
疱瘡は疱瘡神という厄神(やくじん)のしわざとし、この神を祀(まつ)る習俗も多い。高知県では昭和初期までは、種痘をすると、疱瘡神を祀る吊(つ)り棚をつくり、3~4日間、棘(とげ)のある赤い魚と赤飯を供えた。棚は両端を剣先のように削り、厄神除(よ)けとした。戸口、縁側、便所など、境界を表す場所に吊り、かならず赤い御幣(ごへい)を立てた。赤色呪力(じゅりょく)によって悪霊を追い払うという心意である。1888年(明治21)ごろ喜界島(鹿児島県)に疱瘡の流行したとき、金だらいやブリキ缶などを持ち出し、一斉にホーホーと叫びながらこれらをたたいて村境まで疱瘡神を追って行ったという。江戸時代の紀行文にも、流行時には村境に注連(しめ)をはったり、大きな音をたてて侵入を防いだとあるが、いずれも悪霊を追放する習俗である。
[鎌田久子]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…天然痘ウイルスによる伝染力の強い急性発疹性伝染病の一つで,激しい全身症状と特有の水疱性発疹を主症状とする。法定伝染病の一つで,痘瘡(とうそう)または疱瘡(ほうそう)ともいう。古くから人類に甚大な被害を及ぼしたが,E.ジェンナーによる種痘法の発見を契機として予防法が確立され,まず先進国から天然痘が駆逐された。…
…疫病神の一種で,疱瘡をもたらすと信じられた神。疱瘡はかつて最も恐れられた疫病の一つで,各地の神社の境内や辻などには厄神や疱瘡神の石の小祠がまつられている。…
※「疱瘡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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