改訂新版 世界大百科事典 「賭射」の意味・わかりやすい解説
賭射 (のりゆみ)
射礼(じやらい)の翌日の正月18日におこなう宮廷行事。賭弓とも記す。賭は賞を賭(か)けること。淳和天皇の824年(天長1)を文献上の初見とする。左右近衛府で荒手結(てつがい),真手結と称する下稽古を9日,11日,13日などにおこなう。当日,天皇は弓場殿に出御し,近衛,兵衛が分かれて射る。近衛10人,兵衛7人が充てられる。左右近衛の場合,1番ごとに左右各1人ずつ出て,10番勝負する。勝負は1番ごとに3度射つ。左6番勝ち右4番勝てば,左の勝ちとなる。しかしさらに一番ごとに小員・小数の勝負を定めた。たとえば,左の勝ちの場合も,左6番の勝ちの的中成績が合わせて6度,すなわち1番1度ずつであり,右4番の勝ちのそれが合わせて8度すなわち1番2度ずつであれば,右は小員の勝ちと決定する。勝方の者は賭物を賜り,負方に罰酒をおこなう。これを10回を限度として繰り返すが,のち3回または5回が原則になった。賭射が終わると,近衛大将は自邸において射手を饗応する。これを還饗(かえりあるじ)という。
執筆者:山中 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報