近衛(読み)コノエ

デジタル大辞泉 「近衛」の意味・読み・例文・類語

このえ【近衛】[姓氏]

姓氏の一。
五摂家の一。平安末期の関白藤原忠通の長男基実を祖とし、その子基通が京都近衛殿に住み、これを家名とした。以後、歴代摂政関白太政大臣を出した。明治になって公爵
[補説]「近衛」姓の人物
近衛篤麿このえあつまろ
近衛家熙このえいえひろ
近衛前久このえさきひさ
近衛信尹このえのぶただ
近衛秀麿このえひでまろ
近衛文麿このえふみまろ

この‐え〔‐ヱ〕【衛】

近衛府」の略。
近衛府の官人
近衛師団」の略。
近衛兵」の略。

ちかき‐まもり【近衛】

このえ(近衛)」に同じ。
「照るひかり―の身なりしを」〈古今・雑体〉

こん‐え〔‐ヱ〕【衛】

このえ(近衛)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「近衛」の意味・読み・例文・類語

この‐え‥ヱ【近衛】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「こんえ」の変化した語 )
    1. このえふ(近衛府)」の略。
      1. [初出の実例]「近衛逓奏楽」(出典:日本紀略‐貞観一一年(869)四月朔日)
    2. 近衛府の官人。
      1. [初出の実例]「率勇敢近衛等各囲健岑、逸勢私廬」(出典:続日本後紀‐承和九年(842)七月己酉)
    3. このえしだん(近衛師団)」または「このえへい(近衛兵)」の略。
      1. [初出の実例]「陸軍は近衛あり、以て九重を衛り」(出典:軍制綱領(1875)〈陸軍省編〉一)
    4. このえりゅう(近衛流)」の略。
      1. [初出の実例]「年の比三十あまり、きりゃうよく、手は近衛をならひ、千語ぶみかく事名人」(出典:浮世草子・色縮緬百人後家(1718)三)
  2. [ 2 ] 平安京一条の中央を東西に通じる大路

ちかき‐まもり【近衛】

  1. 〘 名詞 〙 宮中に近く伺候して警固する役目。また、その人。近衛府の官人。このえ。
    1. [初出の実例]「てるひかり ちかきまもりの 身なりしを たれかは秋の くるかたに〈壬生忠岑〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇〇三)

こん‐え‥ヱ【近衛】

  1. 〘 名詞 〙このえ(近衛)
    1. [初出の実例]「宸儀南殿に出御し、近衛(コンヱ)階下に陣をひき」(出典:高野本平家(13C前)五)

このえコノヱ【近衛】

  1. 姓氏の一つ

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改訂新版 世界大百科事典 「近衛」の意味・わかりやすい解説

近衛 (このえ)

陸軍で当初は天皇親衛軍として創設され,のちには陸軍の他の軍隊の任務のほかに宮闕警備の特別任務を負った軍隊。1872年(明治5)2月に近衛条例が制定され,親兵が近衛と改称された。各地の鎮台陸軍卿の権内におかれた政府軍であるのとちがい,新設の近衛の総指揮官である近衛都督(初代山県有朋,2代西郷隆盛)は天皇に直隷した。また近衛兵は壮兵つまり職業兵制をとることになった。翌年1月制定の徴兵令は,徴兵制を鎮台兵にのみ適用することを定めていた。この段階では,陸軍の軍隊制度は天皇直属の職業軍隊である近衛と政府の権内にある徴兵軍隊である鎮台の二元兵制として定められた。しかし,実際には徴兵制実施に先だち,征韓論の分裂によって近衛の主力である旧薩摩出身の職業兵の多くが西郷隆盛に従って帰郷したので,75年,近衛兵は鎮台兵中から強壮で行状正しいものを選抜してさらに5年兵役に服させるが,宮闕護衛以外には使用しないと定めた。徴兵で鎮台に勤務したのち近衛に5年服役を義務づけられ,制規に反して西南戦争に出動させられたことが,近衛砲兵の反乱竹橋事件(1878)の一因となった。近衛の長期服役制は79年の徴兵令改正で改められ,以後全国の壮丁中から優秀者を選んで近衛に入営させることになった。鎮台が師団制に改編されたのち,91年に近衛も近衛師団となり,外征向け編制となったが,星の周囲を桜の枝で囲んだ近衛師団独特の帽章は天皇親衛軍の誇りを示しつづけた。
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普及版 字通 「近衛」の読み・字形・画数・意味

【近衛】きんえい

禁衛

字通「近」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の近衛の言及

【親兵】より

…親兵は職業兵をもって編制されるものとし,徴兵令の立案に際してもその対象とされなかった。72年3月親兵を近衛と改称した。【大江 志乃夫】。…

※「近衛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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