赤い部屋(読み)あかいへや(その他表記)Röda rummet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤い部屋」の意味・わかりやすい解説

赤い部屋
あかいへや
Röda rummet

スウェーデンの作家J・A・ストリンドベリ長編小説。1879年刊。ストリンドベリの出世作であるばかりでなく、スウェーデン自然主義文学の最初の作品。作家志望の主人公アルビード・ファルクの理想主義的な姿勢は挫折(ざせつ)に終わるが、そこに盛られた憤懣(ふんまん)は作者自身はけ口を求めていた周囲への憤懣にほかならない。副題に「芸術家、作家たちの生活の描写」とあるように、1870年代のストックホルム風物を背景に、レストラン「赤い部屋」を中心に登場する人物を鋭く風刺的に描き多くの読者を得た。全体に小説としての構成は緊密を欠き、主人公ファルクを別とすると登場人物の描写もスケッチ風ではあるが、それに対しては、副題がこの作品の性格を示している、という解釈が成り立つであろう。

[田中三千夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の赤い部屋の言及

【ストリンドベリ】より

…ウプサラ大学に学び,初期の戯曲《ローマにて》(1870),《平和なき者》(1871),《ウーロフ師》(1872)などが認められ,1877年には軍人貴族の妻シリ・フォン・エッセンと結婚。小説《赤い部屋》(1879)で一躍文壇の寵児となった。しかし持ちまえの辛辣な風刺が災いして83‐89年スイス,フランスなどで逃避生活を送るが,作家としては充実した時期で,自伝的小説《女中の子》(1886‐87,1909),自然主義劇《父》(1887),《令嬢ジュリー》(1888),《債鬼》(1890)などを書いた。…

※「赤い部屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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