赤外線星(読み)せきがいせんせい(英語表記)infrared star

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赤外線星」の意味・わかりやすい解説

赤外線星
せきがいせんせい
infrared star

赤外線の領域でエネルギーを最も多く放出している天体総称。その波長域は 1μmから 1mmまで,天体の温度は 3000Kから 100K程度までさまざまである。その多くはケイ酸塩石墨,氷などからできた塵粒子の発する光が主である。赤外線星を分類すると,(1) 比較的濃い星間雲に付随した塵の雲(KL星雲),(2) さらに密度の高い原始星(BN天体),(3) T-タウリ型変光星(オリオン座FU星),(4) 反射星雲(卵星雲など),(5) 赤色巨星(おおいぬ座VY星,IRC10216など),(6) 銀河クエーサーなどに分けられる。BN天体は,1965年エリック・ベクリンとゲリー・ノイゲバウアーがオリオン大星雲中に発見した赤外線源で,温度約 600K,質量が太陽の 6倍,半径が太陽の 1000倍以上という原始星である。その赤外スペクトルには氷とケイ酸塩塵による吸収がはっきりと現れる。KL星雲は,同じオリオン大星雲中 BN天体の近くに,D.クライマンと F.ロウによって発見された天体で,温度は約 80K,角度で 1′ほどの広がりをもつ天体である。これが収縮すると BN天体のような温度のやや高い原始星に進化するのであろうと思われる。これらの天体は通常水蒸気や水酸基分子のメーザー電波源に一致する。赤外線は偏光しており,強い磁場が存在するものと思われる。ほかに興味深い天体としては,老化した星であるおおいぬ座VY星と IRC10216がある。おおいぬ座VY星は,周期 600日ほどの長周期変光星で,表層大気を星間空間に流出させている。吹き出されたガスが冷えてちりができ,それが星を覆っているため光学的に星の本体を見るのは難しい。赤外スペクトルにはケイ酸塩の吸収が現れている。またこの星は,一酸化ケイ素,水蒸気,水酸基のメーザー電波源にもなっている。IRC10216は赤色巨星であるが,その大気は通常の星と逆に酸素原子よりも炭素原子の数が多い。したがって,星の周囲にあるちりは石墨からできており,石墨に対応する赤外吸収スペクトルを示す。

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世界大百科事典(旧版)内の赤外線星の言及

【赤外線天体】より

…赤外線を放出する天体の総称。赤外線星ともいう。1960年代初頭,カリフォルニア工科大学のレイトンR.B.Leighton,ノイゲバウァーG.Neugebauerらは波長2μmで全天の観測を行い,赤外線の非常に強い天体を数多く発見した。…

【天文学】より

…しかし,もっとゆっくりした合成過程,高温の熱的な平衡過程などの調整過程も重要である。
[恒星の活動]
 オリオン星雲中に,可視光では見えないが強い赤外線を出しているKL天体,BN天体などの赤外線星がある。このような星はできたての星で,ダストを多量に含んだ厚い包被にとりまかれている。…

※「赤外線星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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