ケイ酸塩(読み)けいさんえん(その他表記)silicate

翻訳|silicate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケイ酸塩」の意味・わかりやすい解説

ケイ酸塩
けいさんえん
silicate

金属酸化物と二酸化ケイ素SiO2からなる塩。一般式xMI2O・ySiO2で表される。含水塩、複塩のほか、ケイ素の一部がアルミニウム原子、ホウ素原子で置換された塩も含める(アルミノケイ酸塩という。一般式はMIx[(AlO2)x(SiO2)y]・zH2O)。

 天然に広く多量に存在し地殻の主成分である。成分酸化物の混合融解により人工的にも合成される。一般に融点が高く、融解物を冷やすとガラス状になりやすい。アルカリ塩を除き、水に難溶。酸その他普通の試薬に侵されにくいが、フッ化水素により分解してフッ化ケイ素を生じ、アルカリと溶融すれば水に可溶性となる。ケイ酸塩の結晶構造は種類によって異なるが、基本的にはケイ素原子の周りに酸素原子が配位したSiO4四面体が孤立または連結して規則的に配列し、そのすきまに金属イオン(M)が入ったイオン結晶で、構造により次のように分類される。

(1)ネソケイ酸塩 単独の[SiO4]4-が認められるものをいう(図A)。例としては、橄欖石(かんらんせき)(Mg,Fe,Mn)2SiO4柘榴石(ざくろいし)(Ca,Mg,Fe)3(Al,Fe)2(SiO4)3がある。

(2)ソロケイ酸塩 有限個のSiO4が酸素原子を共有して群状をつくる構造をもつものをいう(図B)。例としては、トルトバイタイト(Sc,Y)2Si2O7、異極鉱(いきょくこう)Zn4(Si2O7)(OH)2(H2O)がある。

(3)シクロケイ酸塩 ソロケイ酸塩のうち、環状のものをいう(図C)。例としては、ベニトアイトBaTiSi3O9、ネプチュナイトNa2(Fe,Mn)TiSi4O12、緑柱石(りょくちゅうせき)Be3Al2(Si6O18)がある。

(4)イノケイ酸塩 SiO4が無限に連結した一次元構造をもつ。これには1本の鎖[SiO3]n2n-を含む単鎖イノケイ酸塩(図Dの(1))と、2本の鎖が酸素原子を共有して連結し、6員環が1方向に融合した構造の[Si4O11]6-を含む複鎖イノケイ酸塩(図Dの(2))がある。例としては、単鎖イノケイ酸塩(図Dの(1))では、透輝石(とうきせき)CaMg(SiO3)2珪灰石(けいかいせき)(Ca,Mn)SiO3、バラ輝石(Mn,Ca)SiO3がある。また複鎖イノケイ酸塩(図Dの(2))では透閃石(とうせんせき)(Ca2,Mg5)(Si4O11)2(OH)2、ゾノトラ石 Ca6Si6O17(OH)2がある。

(5)フィロケイ酸塩 SiO4が無限に連結した二次元構造をもつ。6員環が2方向に融合してできた平面構造の[Si2O5]n2n-を含む(図E)。例としては、タルク(滑石)Mg3(Si4O10)(OH)2、魚眼石(ぎょがんせき)KCa4F(Si4O10)2・8H2Oがある。

(6)テクトケイ酸塩 網目状の三次元構造をもつ。SiO4だけが連結すればSiO2シリカ石英になる。また、ケイ素原子の一部がアルミニウム原子、ホウ素原子で置換されると、アルミノケイ酸、ホウケイ酸の三次元構造のイオンができる。これらの塩をテクトケイ酸塩(テクトは組み立てる人の意)という。例としては、長石(ちょうせき)類たとえばカリ長石KAlSi3O8、沸石(ふっせき)類、方沸石Na(AlSi2)O6・H2Oがある。

 ケイ酸塩工業にはケイ酸塩のいろいろな特性が利用される。ガラス、陶磁器セメント、耐火物や、そのままで宝石、建築材などに用いられる。

[守永健一・中原勝儼]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケイ酸塩」の意味・わかりやすい解説

ケイ酸塩
ケイさんえん
silicate

天然に多量に産出し,造岩鉱物の主成分として地殻のほとんどを占める。一般に融点が高く,融液冷却するとガラス体を形成しやすい。酸,アルカリにおかされにくいが,フッ化水素酸により分解する。構造的には (SiO4)4- の正四面体が単位で,これが規則的に配列され,すきまに陽イオンが入り込んで,結晶が構成される。 (SiO4)4- が単独で存在する場合はオルトケイ酸塩で,橄欖石 (かんらんせき) などがその例。また (SiO4)4- 四面体が連なり環状をなすもの (緑柱石など) ,長い鎖状をなすもの (輝石類) ,二次元に無限に広がった層状構造のもの (雲母類) ,三次元に広がり網目構造をなすもの (長石など) もある。ケイ酸塩の安定性はこのような巨大イオンの存在によって説明される。窯業の主体であるガラス,耐火物,セメント,陶磁器などは,すべてケイ酸塩の特殊性を利用したもの。 (→ケイ酸塩鉱物 )

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