翻訳|graphite
炭素の同素体の一つ。黒鉛(グラファイト)の鉱物名。炭素の元素鉱物として天然にも産するほか、人工的にも多量に合成される。
[守永健一・中原勝儼]
石油コークスなどを1400℃で煆焼(かしょう)して揮発分を除き、結合材を加えて800℃で焼成し、2500~3000℃に熱してつくる。灰黒色の光沢ある六方晶系の板状結晶。石墨は層状格子で、平面内での結合は強いのに、平面間を結ぶ力は弱いので、はがれやすい。また、他の原子が反応して平面の間に入り込んだ層間化合物をつくる。融点が高く、熱膨張性が低く、高温に耐えうること、電気・熱の伝導性があること、化学的にも安定であることなどから、鉄鋼、アルミニウム、各種化学工業の分野で電極、導電材、耐火剤、耐薬品材料、原子炉の中性子の減速材、減摩剤、鉛筆の芯(しん)などとして使われている。
[守永健一・中原勝儼]
非金属元素鉱物の一つ。六方相と三方相の二つの多型がある。ダイヤモンド、ロンズデール石(2Hおよび4Hの2種の多型がある)、チャオ石とは同質異像関係にある。変成岩、とくにある種の片麻岩(へんまがん)中に濃集して産し、鉱床を形成するほか、再結晶石灰岩中、そのスカルン化産物中、低変成度の広域変成岩中、ある種の閃緑(せんりょく)岩中に産し、含有する岩石に還元環境を与える。変成岩中に脈をなすものではマグマ起源の成因が暗示されている。自形結晶は六角板状をなすが、多くは鱗片(りんぺん)状あるいは土状。日本では、富山県上新川(かみにいかわ)郡千野谷(せんのたに)鉱山(閉山)、岐阜県吉城(よしき)郡河合(かわい)村(現、飛騨(ひだ)市河合町)天生(あもう)鉱山(閉山)などで鉱床として稼行された。英名はギリシア語の「書くこと」を意味するグラフに由来する。
[加藤 昭 2017年8月21日]
石墨
英名 graphite
化学式 C
少量成分 ―
結晶系 六方・三方
硬度 1~2
比重 2.26
色 黒
光沢 金属
条痕 黒
劈開 一方向に完全
(「劈開」の項目を参照)
その他 脂感有。撓性顕著
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…グラファイト,石墨(せきぼく)ともいう。炭素Cからなる鉱物の一つで,炭素の同素体。…
…独立戦争における兵器産業をはじめとする軍需の拡大によって石炭の需要は急増し,アパラチア炭田を中心とする開発が進められ,やがてアメリカはイギリスをしのいで世界有数の産炭国の地位を占めるに至った。
[中国]
中国では石炭は煤(ばい),煤炭と呼ばれ,古くは石墨と称した。前1000年ころすでに石炭を使用していたといわれるが,文献上の初見は酈(れき)道元の《水経注》である。…
※「石墨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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