改訂新版 世界大百科事典 「越史通鑑綱目」の意味・わかりやすい解説
越史通鑑綱目 (えつしつがんこうもく)
ベトナムのグエン(阮)朝トゥドゥック(嗣徳)帝の勅命によって編纂された編年体のベトナム通史。1856年より59年の間にファン・タイン・ザン(潘清簡)を総裁とする国史館によって編纂され,71-84年の検閲を経てキエンフク(建福)帝の元年(1884)に進呈,版刻された。ベトナム人によって漢文で書かれた最も重要な通史の一つ。正称は《欽定越史通鑑綱目》。《大越史記全書》等によって伝えられている史実を細かく段に分け,標題に掲げて大意を述べた綱と,これを細かく叙述した目とを置き,中国の《資治通鑑綱目》にならった体裁をとっている。人名,地名等に対する注と綱目の内容に対する批評である謹案を随所に付するほか,各葉の上欄余白にトゥドゥック帝の批評である御批が加えられている。諭旨,奏議,凡例を収めた巻首と前編5巻,正編47巻の全53巻より成る。前編はベトナムの建国神話より始め,漢以後五代までの中国歴代王朝に支配された北属期の歴史を,正編は中国から独立したディン(丁)朝の創立(968)からレ(黎)朝滅亡(1789)までを編述している。
執筆者:川本 邦衛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報