軍備全廃案(読み)ぐんびぜんぱいあん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軍備全廃案」の意味・わかりやすい解説

軍備全廃案
ぐんびぜんぱいあん

一般に,世界各国軍備全廃しようとする計画,提案などをいう。思想家や平和主義者による国家軍備廃止についての提唱は古くから行われ,たとえば I.カントは『永久平和論』 Zum ewigen Frieden,ein philosophischer Entwurf (1795) のなかで,永久平和実現のために各国常備軍の全廃を主張した。ソ連は 1927年 11月に国際連盟の軍縮会議準備委員会に即時完全全般的軍備撤廃協約草案を提出したが,具体的な進展はなかった。第2次世界大戦後もソ連が主導権を取り,59年9月 18日に N.フルシチョフ首相が国連総会演説,翌 19日に提出した「全面完全軍縮に関する政府宣言」で3段階に分けて,4年間に世界各国の軍備を全廃しようと提案した。それがきっかけで,アメリカ,ソ連を中心として交渉が始められた。 62年3月 15日にはソ連が「厳重な国際管理のもとにおける全面的完全軍備撤廃条約草案」を,同年4月 18日にはアメリカが「平和な世界における全面的完全軍備撤廃条約の基本的規定の概要」を提出し,いずれも若干修正されながら,十八ヵ国軍縮委員会などで審議されてきた。両案とも3段階に分けて各国の軍備を撤廃し,そのあとには国内の治安維持と国連平和軍のための兵力だけを残すことにしている。しかし,その撤廃の実施期間,各段階における撤廃の順序程度などについての主張が対立した。実際には,各国が軍備撤廃措置の実施中および実施後における自国安全保障に不安を感じ,ほとんど進展していない。

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