近代精神(読み)きんだいせいしん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「近代精神」の意味・わかりやすい解説

近代精神
きんだいせいしん

近代精神の根本特徴は、人間中心主義という意味におけるヒューマニズムの精神に求めるべきであろう。ヨーロッパ中世が神中心的であったのに対し、近代は人間中心的な時代だということがしばしばいわれる。しかし、近代における人間の発見は同時に世界の発見でもあった。宗教的権威が否定され、超自然秩序がしだいに背後へと退いていくとともに、世俗的、自然的世界が前面に躍り出てくる。それとともに、人間の精神は世界から独立した知的主体として確立される。そこから人間理性による自然支配の道が開けてくる。自然を対象として自己の前に据え、これを観察し、測定し、ある法則的関係において把握しようとする。さらには、これを技術的に支配して自然の富を引き出し、人間にとって住みやすい、幸福な世界を生み出していこうとする。つまり、近代の科学的精神は、自然の合理的、技術的支配ということを通じて人間性を拡充しようとする意味から、ヒューマニズムの精神と直結するのである。

[伊藤勝彦]

『原佑・伊藤勝彦他著『西洋思想の流れ』(1980・東京大学出版会)』

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