酒浸(読み)さけびたし

精選版 日本国語大辞典 「酒浸」の意味・読み・例文・類語

さけ‐びたし【酒浸】

〘名〙
※大阪の宿(1925‐26)〈水上滝太郎〉六「酒(サケ)びたしになった一帳羅(いっちょうら)の御召縮が、衣紋竹両肩を張って、四角張って懸って居た」
人情本風俗粋好伝(1825)後「深草の山の宿といへる所に、店借して〈略〉毎日酒浸(サケビタ)しとなって、色気十分(いろけたっぷり)の悪姥なれば」

さか‐びたし【酒浸】

〘名〙
① 酒の中に浸すこと。さけびたし。
浄瑠璃傾城反魂香(1708頃)上「卑怯者、あゆまずば任せて桶にうち入れて、いきながらの酒びたし」
歌舞伎与話情浮名横櫛(切られ与三)(1853)序幕「与三郎どのは、大切な御用の事は扨措て、此ごろの酒びたし」

さか‐びて【酒浸】

〘名〙 魚、鳥、肉または野菜類を、塩を加えた酒に浸すこと。また、その料理
御湯殿上日記‐文明一〇年(1478)六月三日「はくさかひて二をけまいらする」

さか‐びたり【酒浸】

〘名〙 酒の中に浸っているように絶えず酒を飲んでいること。さけびたり。さかびたし。さけびたし。〔和英語林集成初版)(1867)〕

さけ‐びたり【酒浸】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の酒浸の言及

【酢の物】より

…魚貝類,野菜,海藻などを材料にして,合せ酢をかけたり,あえたりする料理。古代から行われていた(なます)から分化して,室町時代以降〈酢あえ〉〈あえまぜ〉〈酒浸(さかびて)〉などと呼ばれていた料理を包括した呼称で,料理書では《料理早指南》第4編(1804)などに見えるが,一般ではより古くから使われていた言葉のようで,尾張藩士朝日重章の《鸚鵡籠中記(おうむろうちゆうき)》元禄13年(1700)8月14日条に〈醋物〉と見えている。ちなみに,〈酢あえ〉は野菜その他の精進物,〈あえまぜ〉は干魚などを材料とした場合の呼称で,〈酒浸〉は鮮魚をおろしてただちに酒に浸して鮮度の低下を防ぎ,供する直前に酒から出して膾にしたものをいった。…

【ツル(鶴)】より

…《毛吹草》(1638)には松前の名産として塩鶴の名が記されている。料理としては〈汁,せんば,酒浸(さかびて),其他色々〉と《料理物語》(1643)に見える。〈せんば〉は煎酒(いりざけ)と塩などで炒煮(いりに)にしたもの,酒浸は酒にだしと塩を加えて煮立て,それに刺身を浸しておくものであるが,すべて鶴を使った料理には,印(しるし)として〈筋(すじ)〉を上置にした。…

※「酒浸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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