野守鏡(読み)のもりのかがみ

改訂新版 世界大百科事典 「野守鏡」の意味・わかりやすい解説

野守鏡 (のもりのかがみ)

鎌倉時代の歌論。作者は,源有房,天台僧(氏名不詳)など諸説がある。1295年(永仁3)9月に成立書写山播磨の円教寺)に参詣したおりに住僧から聞きえた話を紹介するという趣向は,《大鏡》などと同巧。上下2巻から成り,上巻では二条派的な平淡美を重んじる歌論を説き,京極派,とくに為兼を批判,下巻ではおもに宗教論を述べ,禅宗浄土宗を非難している。反京極派の歌論として,また仏教思想史上の資料として貴重。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の野守鏡の言及

【歌論】より

…為家の子の代で,二条家,京極家,冷泉(れいぜい)家と歌の家が三つに分裂し,以降,派閥争いが激化したために,〈歌論〉も本質を理論的に深めるという方向ではなく,派閥意識をあらわにして,他派を攻撃するケースが増えていったからである。たとえば《野守鏡(のもりのかがみ)》は作者未詳の歌論書であるが,二条派の立場に立って為兼を初めとする京極派を攻撃した書であったし,《延慶両卿訴陳状(えんきようりようきようそちんじよう)》と呼ばれる,《玉葉和歌集》の選者をめぐっての二条,京極両家の厳しい対決を伝える応酬もある。南北朝・室町時代では頓阿(とんあ)の《井蛙抄(せいあしよう)》,二条良基・頓阿の《愚問賢注》,良基の《近来風体抄(ふうていしよう)》等の二条派の歌論書,冷泉派の今川了俊の《弁要抄》《落書露顕(らくしよろけん)》などがある。…

※「野守鏡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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