朝日日本歴史人物事典 「野遠屋兵庫」の解説
野遠屋兵庫
16世紀の堺の商人。天文18(1549)年の『天王寺屋会記』(津田宗達他会記)に「野遠屋兵庫殿道具」とあり,天目,肩衝,香炉,柄杓立などの茶道具を見た感想が,「悪く候」と批判的に記されている。感想を交えず淡々と拝見記を書いている宗達の他会記のなかでは異例の記事であるが,兵庫のみえる史料はこれのみであり,これ以上兵庫と宗達の関係を知ることはできない。ただ,会記中でも商人としては例外的に兵庫「殿」と敬称される人物であることから,14世紀の史料にはすでにみえている堺の伝統的な会合衆の長である能登屋(野遠屋)の一族かと思われ,16世紀に入ってから勢力を持った新興商人の天王寺屋一族との確執が想像される。<参考文献>『堺市史』,泉澄一『堺と博多』
(吉田豊)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報