香炉
こうろ
香を焚(た)くことは、インドでは臭気を除くために古くから行われたが、転じて仏を供養する方法の一つとなった。香炉はそのための器で、形式には居(すえ)香炉、柄(え)香炉、釣香炉、象炉などがある。
居香炉は前机の上に置いて用いるもので、博山(はくさん)炉、火舎(かしゃ)香炉、蓮華(れんげ)形香炉、紇哩字(きりく)香炉、蛸足(たこあし)香炉、鼎(かなえ)形香炉などの種類がある。柄香炉は朝顔形の炉に座と柄をつけ、手に持って用いるもので、古く「玉虫厨子(ずし)」台座にも描かれているものである。釣香炉は環をつけて釣り下げて用い、象炉は象の形をかたどったもので、密教の灌頂(かんじょう)の際に受者がそれをまたいで身を清めるのに用いた。のちには仏事以外にも、室内・衣服に香を焚きしめるのに薫炉が用いられ、香道に用いられる聞(きき)香炉にも数多くの名品が現存している。
[杉本一樹]
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こう‐ろ カウ‥【香炉】
〘名〙
① 香
(こう)をたくのに用いる器。
陶器、または銅、金、銀などで作り、置
(おき)香炉、柄
(え)香炉、釣
(つり)香炉などがある。
香盤。
※書紀(720)天智八年一〇月「仍て金の香炉(かうろ)を賜ふ」
※浮世草子・好色一代男(1682)五「酔覚(えいさま)しに千年川(ちとせがわ)といふ香炉(カウロ)に厚割の一木(ひとき)を焼(たき)てきかせけるに」
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香炉【こうろ】
香をたく器。中国では戦国時代末期に現れ,仏教とともに日本にもたらされた。金属,陶磁器,漆器のものなどがあり,形状はさまざまである。多くは足をもち蓋付(ふたつき)だが,仏前の供(そなえ)香用のもの,玩(がん)香用のものなど,用途によって器形も変わる。茶席では床の間に飾る。→香道
→関連項目アロマセラピー|鍛金
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香炉
こうろ
香を焚く器。金属あるいは陶器で作られる。仏前や仏壇の三具足 (みつぐそく) や五具足の一つとして床の間や卓上に置く置香炉,手に持つ柄香炉,袖に入れる袖香炉,宙につるす釣香炉,衣類などに香を焚きこめる被中香炉などがある。
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こう‐ろ〔カウ‐〕【香炉】
香をたくための器。元来は仏具であるが、香道や床の間の置物飾りなどにも用いられる。形はさまざまで、陶磁器や金属製のものなどがある。香盤。
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香炉
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こうろ【香炉】
香鑪,香罏とも書く。香草を焚き,悪臭を除去するのに用いる器具で,中国では戦国時代末期にあらわれ,漢代以降さかんに用いられた。形態は丸く浅い火皿に脚をつけた豆形で,透しのある蓋をかぶせる。漢代には自名の器があり,当時は熏炉とよばれていた。湖南省長沙馬王堆1号漢墓には彩画香炉があり,なかに炭化したコウボウ,クマタケラン,ハクモクレン,コウホンなどの香草が入っていた。また竹を截頭円錐形に粗く編み,絹で包んだ器があった。
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世界大百科事典内の香炉の言及
【火舎】より
…正倉院の大理石製の本体に5匹の金銅製獅子脚を持つものなどがその例。小型の青銅製鋳造品で透しのある蓋を持つ火舎は,仏教の供養具の香炉として後世までつくられる。三彩釉の火舎は8世紀,瓦質土器の火舎は平安・鎌倉時代にも多く用いられ,大型のものは火鉢,小型製品は香炉として用いられた。…
【薫炉】より
…香草をいぶして衣服を保護したり,室内に香気をただよわす香炉。中国の戦国・漢代に発達し,銅製や陶製のものがある。…
【香道具】より
…(1)十種香箱 二重の箱で華麗な蒔絵が多い。上段には惣包(そうづつみ)や打敷(うちしき),源氏香之図や香割道具等,下段には聞香炉,
(銀)葉盤(ぎんようばん),重香合(じゆうこうごう),香筯建(きようじたて),香札,札筒,折据(おりすえ),火末入(ひずえいれ),
葉入などを納める。縦7寸5分,横6寸4分,高さ6寸7分(1寸は約3cm)。…
【三具足】より
…仏前の供養具である花瓶,燭台,香炉の三つ道具を総称していう。しかし,室町時代には供養具の性格から離れ,鑑賞具として扱う考えが生まれる。…
※「香炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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