金額責任主義(読み)きんがくせきにんしゅぎ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金額責任主義」の意味・わかりやすい解説

金額責任主義
きんがくせきにんしゅぎ

船主責任制限の制度の一態様。船主の責任を,事故ごとに債権を発生させた船舶の積量トン数に応じて,一定の標準で算定された金額に限定する主義。船主に有限責任を認めてこれを保障する傾向は,遠く中世の冒険航海時代に始る海商法独特の制度として各国法に認められており,その根拠は,おもに危険性が大きい海上企業の保護奨励という政策的理由と沿革的理由にある。しかし,船主責任制限に関する各国立法の態様は,その特殊な沿革と事情により一様ではなく,金額責任主義のほか委付主義,執行主義,船価主義,併用主義などに分れている。金額責任主義ないし金額主義はイギリスが 1862年の商船法 Merchant Shipping Act以来とる主義であり (それゆえにイギリス主義ともいわれる) ,現在の国際的な条約の立場ともなっている。 1924年に船価主義と金額主義を併用しかつ航海主義をとる船主責任制限条約が成立するが,これを採用する国はきわめて少なかったので 57年に新しい船主責任制限条約が成立する。これは金額責任主義だけをとり,1tあたりの責任額を大幅に引上げるとともに事故主義を採用し,あわせて船主責任制限手続として責任制限基金の形成および分配についての規定をおく。この 57年条約は主要海運国に受入れられ,日本もこれを批准して,国内法化する船主責任制限法を 75年に制定している。その後 57年条約の不備を是正する 76年海事債権責任制限条約が成立したのに伴い,82年にこの条約に加入するとともに船主責任制限法を改正した。

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