日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄タンパク質」の意味・わかりやすい解説
鉄タンパク質
てつたんぱくしつ
iron proteins
鉄を含む複合タンパク質の総称。おもに鉄とタンパク質が直接結合しているもので、ヘモグロビン、ミオグロビン、チトクロム(シトクロム)あるいはヘモペキシンのように、ヘムの形で鉄を含むものはとくにヘムタンパク質とよんで区別している。肝臓、脾臓(ひぞう)、骨髄、筋肉、血液中にあって、鉄の運搬・貯蔵体であるフェリチンは分子量約46万と大きく、分子量約1万8500のサブユニット24個からなり、3価の鉄約2500個を結合している。電子顕微鏡でフェリチン抗体法として利用されている。フェレドキシンは不安定な無機硫黄(いおう)原子Sを含み、分子量約6000~1万4000の鉄‐硫黄クラスター(多面体型の原子集団)を構成している電子伝達体である。分子量約7万5000のトランスフェリンは血液中にあって鉄の運搬を担っており、幼弱な赤血球に使われる鉄原子はトランスフェリンに結合した形になっている。ヘモシデリンは決まった形のない鉄貯蔵タンパク質で、鉄含有量が約37%とフェリチンよりも多く、不溶性である。おもに細網内皮系細胞やその細胞間にみられる。
[野村晃司]