鉄
てつ
iron
元素記号 Fe ,原子番号 26,原子量 55.845。周期表8族,鉄族元素の1つ。地球上ではアルミニウムに次いで豊富に存在し,地殻平均含有量 5.63%。主要鉱石は磁鉄鉱,赤鉄鉱および褐鉄鉱で,鉄含有量 55~65%程度のものが多い。海水中の存在量 0.01 mg/l 。鉱石は焙焼して酸化鉄とし,コークスおよび石灰石とともに溶鉱炉に入れ,熱風を送りコークスを燃焼させ,銑鉄を得る。単体は白色,光沢ある金属で,展性,延性に富み,強磁性をもつ。融点 1536℃,比重 7.86,硬度 4.5。常温では安定であるが,湿気があると錆を生じる。酸に容易に溶けるが,濃硝酸により不動態となる。原子価は2,3価。工業的に最も重要な金属元素で,人間の生活に広く関係した広範な用途がある。
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鉄【てつ】
元素記号はFe。原子番号26,原子量55.845。融点1536℃,沸点2863℃。古くから知られた金属元素の一つ。α,β,γ,δの4形態があり転移点は順次768℃,910℃,1390℃。純鉄は白色光沢のある金属で,展延性に富み,強磁性(768℃以上では消失),硬度4.5。常温では空気中で変化しないが,湿気があればさびを生ずる。酸素中では燃え,熱すれば水蒸気と作用して四三酸化鉄Fe3O4を生ずる。希酸には水素を発生して溶けるが,濃硝酸では不働態をつくり不溶。工業上最も重要な金属で,地球上に広くかつ多量に存在(クラーク数4.70,第4位で,金属元素としてはアルミニウムに次ぐ)するが,自然鉄としての産出はまれである。鉄は血中ヘモグロビンなどに含まれる生体必須元素でもある。→鋼/製鉄/鉄鋼/鉄鉱石
→関連項目純鉄|銑鉄|ハステロイ
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鉄
原子番号26,原子量55.845,元素記号Fe,8族(旧VIII族)の元素.生体の必須元素の一つ.血色素であるヘモグロビンや肉色素であるミオグロビン,呼吸鎖の構成成分であるシトクロムなどの構成元素.鉄を必須の構成元素とする酵素も多い.ヒト血液の正常値は50〜150μg/dl.
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てつ【鉄】
鉄の60~70%は赤血球のヘモグロビンに含まれ、全身に酸素を運ぶ役割をになっています。このため鉄が不足すると酸欠状態をまねき、貧血、冷え症、疲労倦怠(ひろうけんたい)、思考力の低下、発育不全などの悪影響がでてきます。
<Q>鉄は1日に約1mgを消耗しますが、吸収が悪いので10倍の1日10mgはとりたいものです。とくに妊娠中・末期の女性は、1日20mg以上は摂取しましょう。また、貧血気味の人や胃潰瘍(いかいよう)や痔(じ)など出血性の病気がある人も、鉄の欠乏に要注意です。貧血の90%は鉄不足が原因といわれ、症状の現れない潜在的鉄欠乏症の人も多いので、十分な摂取を心がけてください。
可食部100g中に含まれる鉄の多い食品として、以下のものがあります。青ノリ(素干し)77.0mg、ピュアココア14mg、豚レバー13mg、きなこ(全粉・黄大豆)8.0mg、パセリ7.5mg、凍りどうふ(高野どうふ)7.5mg、ドジョウ5.6mg。成人1日あたりの推奨量は男性7.0~7.5mg、月経のある女性10.5mgです。
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てつ【鉄】
微量ミネラルのひとつ。元素記号はFe。赤血球中に含まれる赤色色素であるヘモグロビンの構成成分。肉類、魚介類、豆製品、野菜類などに多く含まれる。体内にある約3~5gの鉄の60~70%は血液中に「機能鉄」として全身に酸素を運び、残りは肝臓・骨髄・筋肉のたんぱく質に「貯蔵鉄」として存在し、不足した際に使われる。各臓器への酸素運搬に働くほか、酵素の活性化、筋肉の収縮運動促進、ストレス・病気などの抵抗力向上、細胞の働きの正常化などの作用があるとされる。
出典 講談社漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典について 情報
てつ【鉄 iron】
周期表元素記号=Fe 原子番号=26原子量=55.847±3地殻中の存在度=5.63%(4位)安定核種存在比 54Fe=5.84%,56Fe=91.68%,57Fe=2.17%,58Fe=0.31%融点=1535℃ 沸点=2750℃固体の比重=7.86(20℃)液体の比重=6.9(1530℃)電子配置=[Ar]3d64s2 おもな酸化数=II,III周期表第VIII族第4周期に属する鉄属元素の一つ。
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くろがね【鉄】
〔黒い金属の意〕
① 鉄の古称。現在も文語的に用いる。 「 -づくりの門」
てつ【鉄】
① 〔iron; ラテン ferrum〕 8 族(鉄族)に属する遷移元素の一。元素記号 Fe 原子番号26。原子量55.85。銀白色の金属。赤鉄鉱・磁鉄鉱・黄鉄鉱などとして地球上に広く多量に存在する。地球内核の主成分と考えられている。比重7.87。3種の同素体があり、強磁性または常磁性を示し、いずれも延性・展性に富む。湿気のない空気中ではさびない。酸に溶けて水素を発生する。酸素気流中で燃え、高温で水蒸気と反応する。ヘモグロビンやチトクロムのヘムの構成成分となるなど、生体にとってきわめて重要。有史以前から知られた金属で人間生活に広く関係をもち、銑鉄・鋼あるいは種々の金属との合金として広く用いられ、工業的にも最も重要な元素。くろがね。
② かたいもの、強固なもの、堅固なもののたとえ。 「 -の意志」 〔「銕・䥫」は旧字体「鐵」の古字。「鉃し(やじり)」は別字〕
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てつ【鉄】
〘名〙
① 鉄族元素の一つ。元素記号 Fe 原子番号二六。原子量五五・八四五。光沢のある白色の重金属。天然には赤鉄鉱、磁鉄鉱、褐鉄鉱、黄鉄鉱、
菱鉄鉱、砂鉄などの形で広く存在する。酸素に対する化合力が強く、湿気があると空気中で容易に酸化してさびを生じる。展性・延性にすぐれ、炭素を含んだ鋼鉄の形で重工業の基礎資材として広く用いられる。くろがね。
※正倉院文書‐天平六年(734)尾張国正税帳「鐶并廻等料

壱拾漆斤」
※浮世草子・好色一代男(1682)七「七所の大脇指、すこし反して、あい鮫を懸、鉄(テツ)の古鍔ちいさく、柄長く」
② (多く鉄で作られるところから) 刀などのはもの。切れもの。また、武器。兵器。〔李陵‐答蘇武書〕
③ 堅固であること、強固であること、確実で、しっかりしていることの
たとえ。
※正秀宛芭蕉書簡‐元祿四年(1691)正月一九日「乙州江戸へ立候に付、跡之事御精に可レ被レ入旨、乙州方よりも申こし、鉄のたてをつきならべ候」
※婦系図(1907)〈泉鏡花〉前「薄色の鉄の派手な塩瀬(しおぜ)に」
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世界大百科事典内の鉄の言及
【専売】より
…古くは春秋,戦国時代,山東の斉は管仲の手により,塩を国家統制下にいれ,富強をもたらしたといわれる。鉄とともに中国全土に塩の専売が実施されたのは漢の武帝の前119年(元狩4)である。農具を中心とした鉄器の普及と商品化は生産力を飛躍的に増加させ,同時に食生活を豊かに分化させる。…
【鋳造】より
…材質と鋳物の種類によって,適切な鋳込み温度が定まっており,溶湯を測温して確かめる。ねずみ鋳鉄の場合には,湯面模様によって溶湯の温度を判断することも広く行われている。注湯する場合には,取鍋をクレーンで吊って運ぶか,小物では,湯汲みを使って行われる。…
【鉄鋼業】より
…鉄鋼業はしばしば〈産業の米〉といわれる基礎素材としての鉄鋼材を諸産業に供給する基幹産業である。鉄鋼材には純鉄,銑鉄,鋼,フェロアロイ(合金鉄)などがあるが,最も広範に使用されるのは銑鉄と鋼である。…
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