日本大百科全書(ニッポニカ) 「鑑戒図」の意味・わかりやすい解説
鑑戒図
かんかいず
中国画の画題。勧戒図とも書く。善を勧め悪を戒める目的で、歴史上・伝説上名高い聖人、賢人、明君、名臣、義人、烈士、貞女、孝子、節婦などの人物や行状を主題とした図をいう。中国では儒教が国家の学問、政治の思想の主流を占め、絵画を道徳教化の手段と考える傾向が強かった。ために、儒教の盛んであった漢代にはこうした実利的な絵画観が支配し、墳墓内の壁面に使用された画像石や、楽浪彩篋塚(らくろうさいきょうづか)出土の漆器に施された装飾画の遺品を例にとっても、鑑戒図が盛んに描かれたことがわかる。
日本でも桃山、江戸時代になると狩野(かのう)派の絵師たちは好んで鑑戒図を描き、山楽(さんらく)や探幽の「帝鑑図」などその代表例である。
[永井信一]