精選版 日本国語大辞典 「鑚」の意味・読み・例文・類語
たがね【鏨・鑽】
- 〘 名詞 〙 ( 「たかね」とも )
- ① 鋼鉄製の手工具の一つ。木工ののみに似た工具で、ハンマーなどでたたいて、金属の切断、石・コンクリートの破砕などに用いる。
- 鏨①〈和漢三才図会〉
- [初出の実例]「手足を剔(き)り欠き、錠(タカネ)を以て頸を缼る。〈国会図書館本訓釈 錠 多加爾〉」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
- 「鑚 陸詞切韻云鑚〈徐感反 上声之重 漢語抄云太加禰〉剪銕器也」(出典:二十巻本和名抄(934頃)一五)
- 「銀龍のたがねまばゆき彫物師」(出典:俳諧・広原海(1703)八)
- ② 昔、海戦に用いた武器の一つ。鉄梃(てってい)の先にまさかりのような刃をつけ、敵船の船尾に打ちつけたもの。
- ③ ほこさき。やじり。
鑚の語誌
( 1 )「新撰字鏡」では「錠」「」を「太加爾(タガニ)」と訓じているが、「二十巻本和名抄」「観智院本名義抄」には「タガネ」の形で見え、中古にはタガネになっていたものと思われる。
( 2 )①の挙例「霊異記」の「錠 多加爾」は、訓釈の仮名用字法でネの音に「爾」の字も用いるので、これはタガネと考えられる。
( 3 )「ニ」「ネ」には古くから交替が見られ、東国の歌には、助詞「がね」を「我尓」、「兼て」を「加尓弖」に作る例もある。