チェコの作家カレル・チャペックの童話で、童話集『九つのお話と、も一つおまけのヨゼフ・チャペックのお話』中の一編。1932年刊。ただし、日本では童話集全体の題名として有名になっている。この童話集は、兄ヨゼフの挿絵入りで、魔法使い、王女様、妖精(ようせい)、河童(かっぱ)のようなおとぎ話的存在ばかりでなく、医者、郵便局員、警官、浮浪者など、日常生活で子供とよく接触する人たちをも主人公にし、思いがけぬ空想や現実社会への批判を、ユーモアに満ちた表現で軽妙に語っている。大人も楽しめる世界児童文学中の傑作で、わが国では、中野好夫の名訳により広く読まれ、愛好者も多い。
[飯島 周]
『中野好夫訳『長い長いお医者さんの話』(岩波少年文庫)』