改訂新版 世界大百科事典 「防虫木材」の意味・わかりやすい解説
防虫木材 (ぼうちゅうもくざい)
防虫剤で処理した木材をいう。防腐処理木材と違い,工業規格で決められた防虫処理木材はない。防虫剤の対象となる虫は,乾材害虫として,ヒラタキクイムシ,ナガシンクイムシ,シバンムシなどがある。湿材害虫としてはシロアリがあり,シロアリを防ぐ薬剤を防蟻剤(ぼうぎざい)と呼び(これで処理された木材を防蟻木材という),防虫剤と区別することもある。しかし,実際に使われている市販薬剤は,防蟻防虫性能をもったものである。防虫剤として有効なものは,有機塩素系化合物だが,そのほとんどが人間に対して強い毒性を示すので使えず,低毒性のものがごく一部使用されている。このほか有機リン化合物も毒性が低く,この用途に使われているものがある。乾材害虫のみを対象とした薬剤としてはホウ素系化合物がある。これは毒性がなく,消化中毒剤である。また防蟻を目的とするものに土壌をクロルデン乳剤で処理する方法がある。薬剤の木材への注入方法は防腐木材と同じである。
執筆者:善本 知孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報