日本大百科全書(ニッポニカ) 「シバンムシ」の意味・わかりやすい解説
シバンムシ
しばんむし / 死番虫
death watch beetles
昆虫綱甲虫目シバンムシ科Anobiidaeに属する昆虫の総称。世界に広く分布しており、1000種以上知られ、日本にも40種以上の記録がある。体長2~7ミリメートル前後。円筒形ないし卵形、あるいは球形に近い。体色は淡褐色から黒色、体表は毛に覆われ、白、黄、黒の色などの毛で背面に斑紋(はんもん)をつくるトサカシバンムシTrichodesma fasciculareのようなものもある。触角は多少とものこぎり状のことが多いが、ホソクシヒゲシバンムシ類Ptilinusの雄では櫛(くし)状に分枝する。幼虫は白くて柔らかく、長い毛が生えていて、体をC字形に曲げている。成幼虫ともおもに乾いた植物質を食害し、枯れ木や材木を害するもの、生薬(しょうやく)、葉タバコ、乾燥食品などを食べ荒らすもの、サルノコシカケ類のキノコに孔(あな)をあけるものなどがある。
この類を日本で死番虫、英名でdeath watch beetlesとよぶのは、ヨーロッパで家具や建材に大害を与えるアノビウム・ストリアトムAnobium striatumなどが、交尾期に、材にあけた孔の中で頭を前胸前縁または孔の壁面にぶつけて数回連続した音を出すことからきており、この音が夜の静けさのなかで響く無気味さが死の時計を思わせたものであろう。また、死番虫とは死を見守る意味からと思われる。このように家材、古木につくほか、クシヒゲシバンムシPtilineurus marmoratusは畳や合成繊維、古材を害し、ときに大発生することがあり、古書を害するフルホンシバンムシGastrallus immarginatus、タバコ葉につくタバコシバンムシLasioderma serricorne、チョウセンニンジンなどの生薬やビスケットなどの害虫ジンサンシバンムシStegobium paniceumのような変わった害虫も含まれる。
[中根猛彦]