日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラタキクイムシ」の意味・わかりやすい解説
ヒラタキクイムシ
ひらたきくいむし / 扁蠹虫
powder post beetle
[学] Lyctus brunneus
昆虫綱甲虫目ヒラタキクイムシ科Lyctidaeの昆虫。熱帯性であるが広く世界に分布し、北海道北部を除く日本全土に産する。成虫の体長2.2~8ミリ、茶褐色で細長く扁平(へんぺい)。ラワン材、ナラ材の大害虫として有名であるが、各種の広葉樹やタケの乾材も加害する。成虫は5~7月に被害材に小孔(こあな)をあけ、白粉を排出して外に出る。産卵は材表面に現れた導管内に行う。幼虫は外部に現れることなく材内部を食害し、秋に表面近くに蛹室(ようしつ)をつくり、翌春に蛹(さなぎ)になる。広葉樹の心材や針葉樹はまったく加害されない。被害の発見は幼虫期の食害の終わった成虫脱出期であるので、この虫の被害を防ぐには予防が第一である。材表面を塗装すると産卵防止効果があるが、近年は防虫処理された製材や合板が市販されている。軽微な被害材での駆除は、殺虫剤の塗付や散布、脱出孔への注入などがよい。
この科の昆虫は世界に約90種いて、日本には本種のほかに4種が分布し、いずれも地域的に分布が限られ、ラワン材などの広葉樹の乾燥材に被害を与えている。アラゲヒラタキクイムシは竹材にも寄生する。
[野淵 輝]