改訂新版 世界大百科事典 「ヒラタキクイムシ」の意味・わかりやすい解説
ヒラタキクイムシ
Lyctus brunneus
甲虫目ヒラタキクイムシ科の昆虫。ラワン材の大害虫。体は赤褐色で名のように扁平。触角は先の2節が太く,胸は前方へ幅広い。体長2.2~7mm。世界各地に分布する。成虫は5月ころから出現し,各種の材に産卵するが,とくにラワン材を好む。材に産卵管を挿入し1~4卵ずつ産みつける。卵は10日あまりで孵化(ふか)し,幼虫は10月ころまで材の中を食害する。幼虫で越冬し,翌春再び材を食し,4~5月ころ材の中で蛹化(ようか)する。さなぎの期間は約10日。幼虫の体は白色で,腹方へ曲がり,胸部が著しく太い。胸脚を有し,第8腹節の気門が大きい。デンプン質の多い辺材が被害を受けやすい。加害されている材からは木の粉末が出る。このためヒラタキクイムシ科Lyctidaeを英語ではpowder-post beetleという。ナラヒラタキクイムシL.linearis,ケヤキヒラタキクイムシL.sinensisは成虫,幼虫が本種に似る。そのほか,アラゲヒラタキクイムシLyctoxylon dentatum,ケブトヒラタキクイムシMinthea rugicollisなどが家屋や家具に被害を与える。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報