防腐木材(読み)ぼうふもくざい

改訂新版 世界大百科事典 「防腐木材」の意味・わかりやすい解説

防腐木材 (ぼうふもくざい)

木材防腐剤で処理した木材。木材の腐りにくさは,処理薬剤の種類,量だけでなく,処理方法でも変わる。したがって,防腐木材を正しく規定するには,両者について明記される。例えば,〈加圧クレオソート油防腐処理木柱〉のようにJISでは表されている。木材が含まねばならない防腐剤の量は,薬剤の種類により決められる。このようにして作られた防腐木材も,その効果は必ずしも明確ではない。木材の腐りやすさは,使われ方で著しく違うためである。

 木材の防腐については,薬剤の開発と薬剤処理方法の改良の面から,種々のくふうが行われている。よく使われる防腐剤は四つある。第1はフェノール類無機フッ化物(PF)系防腐剤である。これらのほかに副成分としてヒ素化合物クロム化合物を含む。水に溶け,フッ素,フェノール化合物は防腐性能をもつ。JISでは,フェノール類とフッ素を主体としたものの配合が決められている。第2はクロム,銅,ヒ素化合物(CCA)系防腐剤で,水溶性である。JISでこれらの用いる組成が決められている。これら水溶性防腐剤は防腐のほか,防蟻(ぼうぎ),防虫性能ももつ。すなわち,銅は防腐性能をもち,ヒ素化合物は防虫・防蟻性能をもち,クロム化合物はおもに防腐剤を木材に定着させる作用をもつ。第3は有機スズ化合物で,油溶性である。油としては軽油灯油重油などが使われ,スズとしてはトリブチルスズオキシド(TBTO)が用いられる。第4はクレオソート油で,有効成分そのものが油状である。木タールから作られることもあるが,石炭の高温乾留によってできるコールタールを,さらに蒸留して作られることが多い。総合的な防腐効力に優れており,古くから電柱まくら木の防腐剤として使われている。組成はJISで決められている。以上4種のほか,ペンタクロロフェノール(PCP)が世界的には広く使われているが,日本では製造が中止されており,現在ほとんど使われていない。

 木材へ薬剤を浸透させるため,いろいろな方法が使われているが,大きく次の五つに分けられる。第1は表面処理法で,塗布,吹付け,浸漬(しんせき)により行われる。第2は温冷浴法と呼ばれるもので,木材を温めておいて材中の空気を外へ追いだし,次の冷却時にその分だけ薬剤を材中にとりこむ方法である。第3は拡散法で,木材の表面に塗った濃厚な薬剤を,木材が含む水分のなかに拡散させていく方法である。第4は加圧注入法で,密閉缶のなかを減圧・加圧して薬剤を木材に浸透させる方法である。すなわち,減圧(130mmHg程度)後,大気圧にもどすときに薬剤を入れる方法,大気圧で木材に薬液を接しさせ,4~15kgf/cm2の加圧で内部におしこむ方法,これら両方法を併用する方法がある。これらは最も強い防腐処理を行うのに適した方法である。第5は接着剤混入法で,他の方法が薬液を木材に直接浸透させる方法であるのにたいし,この方法は,合板やパーティクルボード製造時に,接着剤に薬剤をまぜて,板に防腐性能を与えようとするものである。

 防腐剤の効力を調べるにはいくつかの方法がある。そのうちで実際に木材の使われている状態にいちばん近い状態で行われるのが杭試験で,これは杭を地面にさしておき,地際の腐り方を調べる方法である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「防腐木材」の意味・わかりやすい解説

防腐木材
ぼうふもくざい
preserved wood

薬品で防腐処理した木材。木材防腐特別措置法 (昭和 28年法律 112号) は,鉄道の枕木,電柱,橋・桟橋の梁・桁・脚に防腐木材使用を規定している。ほかに土木用材,建築用材,坑木も防腐処理が施される。防腐薬剤には無機,有機ともにあり,単独または混合して用いる。また水溶性,油溶性の別があり,水溶性のものは木材に浸透しやすいが,溶出も速い。油溶性のものは溶出しにくいが,強い臭気がある。無機薬剤には,塩化亜鉛,昇こう,硫酸銅,フッ化塩,亜ヒ酸塩など,有機薬剤には,フェノール類のクレゾール,キシレノールのほか,その塩素誘導体,ニトロ誘導体,クレオソート油,コールタール,低温タールなどがある。処理法は,(1) 表面処理 塗布,噴霧,浸漬,(2) 注入 防腐薬タンクに浸す方法と高所から落差圧を利用して,薬品を木材断面に落して注入する方法がある,(3) 拡散 濃厚薬液を塗布または浸漬して,1~2ヵ月放置して浸透させる,(4) 加圧注入 密閉した缶に木材を入れ,排気と加圧を組合せて防腐薬剤を注入する,などがある。

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