ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「隣人訴訟」の意味・わかりやすい解説
隣人訴訟
りんじんそしょう
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…交通事故,騒音,大気汚染,日照権侵害など公害問題のような不法行為の領域,欠陥マンション,割賦販売など消費者取引のような債務不履行の領域,また医療過誤,薬害,欠陥商品などのような不法行為と債務不履行との中間的領域において多数の紛争を生じている。さらには,いわゆる隣人訴訟(たとえば,主婦が買物に行く間子どもを隣家の主婦に預けたところ,子どもが近所の溜池に落ちて死亡した事件。1983年の津地方裁判所判決)のように平穏な日常生活の過程から生じた不幸なできごとにおいても損害賠償が問題となる。…
…(3)現代型訴訟といわれるものは,このように,訴訟の効用と限界を改めて問い直すものであるが,近所づき合いや,学校の先生と生徒,生徒間,職場の同僚間といった関係で生じる紛争の解決のために,訴訟は果たして適切な手段であるか,ほかにもっと適切な手段を考案する必要はないかといった問題も,同時に提起されている。近所の知り合いに子どもを預けて買物に行っている間に,その子どもが池に落ちておぼれ死んだというので,預けた親が預かった親を訴えて勝訴判決を得た(1983)が,そのことがマスコミに報道されるや,匿名の人々からの非難やいやがらせの手紙や電話が殺到し,原告はついに訴えを取り下げざるをえなくなったという事件(いわゆる隣人訴訟の一例)があったが,このような事件の発生は,裁判を受ける権利が憲法上保障されているにもかかわらず,それが実際にはいまだ十分に確立されていないという点を反省させられるとともに,そもそも,このような紛争を解決する手段として,民事訴訟が適切なものかどうか,もっと気軽に利用でき,双方の当事者も納得できるまで話し合えるような訴訟とは異なった手続を考案する必要はないか,という問題を投げかけている。(4)訴訟は,公平で慎重な裁判がなされるようなものでなければならないとすれば,それをどんなに改善しても,やはりある程度の時間と金がかかることは避けられない。…
※「隣人訴訟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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