日本大百科全書(ニッポニカ) 「雌雄モザイク現象」の意味・わかりやすい解説
雌雄モザイク現象
しゆうもざいくげんしょう
動物の個体の中で、雄の形質を示す部分と、雌の形質を示す部分とが明瞭(めいりょう)な境界をもって混在する雌雄モザイク体を生ずる現象をいう。雌雄モザイク体は、中間型の性形質が現れる間性の場合と異なり、二つの異なる染色体構成をもつ。ショウジョウバエ、ガ、チョウ、ミツバチ、カイコなどの昆虫類、少数の甲殻類やクモ類、ウソ、キジ、ニワトリなどの鳥類にみられる。成因についてはいろいろな説があり、動物の種によっても異なるようである。ショウジョウバエでは、本来は雌になる受精卵が、分裂中に一部の細胞で性染色体の一つを放棄し、雄の染色体構成となり、雌雄モザイク体が生ずる。ミツバチでは、単性発生をして雄になる途中で、核の一つと精子核が結合し(部分受精)、雌の染色体構成をもつ組織ができ、モザイク体となる。そのほかの成因としては、多精受精により卵核以外に極体も受精したり、極体の合体した異常核が存在するために、個体内で二つの異なる染色体構成が生じて雌雄モザイク体が形成される場合などがある。
[高橋純夫]