雨窓欹枕集(読み)うそうきちんしゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雨窓欹枕集」の意味・わかりやすい解説

雨窓欹枕集
うそうきちんしゅう

中国、明(みん)代中期の口語短編小説集。洪楩(こうべん)編。1540年代の成立。編者銭塘(せんとう)(浙江(せっこう)省)の蔵書家で、その収集した話本、すなわち宋(そう)代に大都市で流行した講談台本として当時流布していた小冊子を、雨窓、長燈、随航、欹枕、解閑、醒夢(せいむ)の6集、各10編にまとめて出版した。のち散逸したその話本のうち、1933年になって、浙江省寧波(ねいは)の古書店で偶然発見された、雨窓集の残本5編、欹枕集の残本7編をあわせて翻刻したのが本書である。日本の内閣文庫(現国立公文書館所蔵)で発見され『清平山堂話本』の名で刊行された他の諸残編とともに、宋・元時代の初期の話本の形態をよくとどめ、素朴な味わいをもつ小説集として価値が高い。

[今西凱夫]

『入矢義高訳『中国古典文学大系25 雨窓欹枕集他』(1967・平凡社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雨窓欹枕集」の意味・わかりやすい解説

雨窓欹枕集
うそうきちんしゅう
Yu-chuang-yizhen-ji

中国の口語体短編小説集。洪べんの編。明の嘉靖 20 (1541) ~30年頃刊。洪べんは銭塘の人で字は子美。蔵書家として著名で,上記の年間その書斎の清平山堂に収集された話本 (わほん) を『雨窓』『長灯』『随航』『欹枕』『解閑』『醒夢』の6集 (各集 10編ずつの計 60編) として出版した。『雨窓欹枕集』とは,この『清平山堂話本』のうち,1933年に中国で発見された『雨窓集』の残本5編,『欹枕集』の残本7編を合せて呼ぶ名称。宋,元の原本にあまり手を入れないまま出版されたものが多く,話本の初期の姿を比較的忠実に伝えていると考えられている。

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世界大百科事典(旧版)内の雨窓欹枕集の言及

【口承文芸】より

…やがてそれらは,明代になって作家の手によって文字に整理され,こうして《三国志演義》120回(羅貫中),《水滸伝》120回(施耐庵(したいあん),羅貫中),《西遊記》100回(呉承恩)の,中国の代表的な長編読物(章回小説という)が出現した。 〈勾欄〉における短編の物語を集録したものには,《京本通俗小説》《清平山堂話本》《雨窓欹枕集》《熊竜峯四種小説》などがあり,やがてはそれらが文字としても整理されて,明代の《三言二拍》《今古奇観》になって今日に残されている。明から清にかけては,とくに江南に〈陶真〉という盲目の琵琶語りの芸人が出現し,孟姜女の話や,白蛇伝の話を伝えてきた。…

※「雨窓欹枕集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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