書物を読んだり、物を書いたりするための部屋。書院あるいは学問所も同様の目的の部屋あるいは建物であった。そのほかに執務用の部屋や応接室あるいは主人の居室を兼ねることもある。住宅では、洋室の場合と和室の場合とがある。歴史的にみると、古代末から中世初めの上層階級の住宅に学問所が設けられた例が『吾妻鏡(あづまかがみ)』などにみられ、中世の仏寺において僧侶(そうりょ)の居室に造り付けの机にあたる出文机(だしふづくえ)がつくられた。のちに付書院(つけしょいん)とよばれるようになるこの出文机で書物を読み、物を書いている光景が、中世の絵巻物にはしばしば描かれている。この付書院が設けられた部屋あるいは建物が書斎にあたり、書院または学問所とよばれていた。近世の内裏や仙洞(せんとう)御所に建てられた学問所は、床の間・違い棚や付書院などの座敷飾りを備えた書院造の建物であるが、なかには間口2間から4間ほどの違い棚のように棚の構成に気を配った書棚を設けていた例もあった。夏目漱石(そうせき)の『吾輩(わがはい)は猫である』の主人公苦沙弥(くしゃみ)先生の家の書斎は、南に面する和室の6畳間で、机を置いて南向きに座っているが、モデルになった現在明治村にある漱石の家の書斎は南面する7畳の部屋で、当時は北隣の玄関との間の襖(ふすま)の前に本棚が置かれていた。書斎の造りには決まったものがあるわけでなく、とくに和室の場合には作家のように仕事場として必要な場合でも座敷などが転用されている場合が多い。洋室の場合には家具としてライティングデスクや書棚などが必要である。最近はこれらの家具のほかに、収集した情報を整理し記録するためにファイリング・キャビネットやコンピュータが必要になっているばかりでなく、ものを書くためのワードプロセッサー、情報を受けあるいは送るための電話やファクシミリなどを備えることも考慮しておく必要がある。
また、第二次世界大戦後、住居が家事労働を配慮して主婦を中心に考えられるようになったために、主人のいる場所がなくなってしまったところから、書斎を見直し、主人のいる場所としようという声が、大きくはないがあがっている。
[平井 聖]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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