日本大百科全書(ニッポニカ) 「電磁ジェット推進船」の意味・わかりやすい解説
電磁ジェット推進船
でんじじぇっとすいしんせん
船底部分から海中にかけて上下方向に強力な磁場を発生させ、これに直角方向の電流を海水中に通すことにより推進する船。原理は、電気モーターを回すのと同じフレミングの左手の法則である。モーターの場合、回転子に巻いた電線に電流を流して磁場内に置き回転させるものであるが、電磁ジェット推進船では電線のかわりに海水に電流を流し、船から出る磁場との相互作用で海水を押しやることにより推進する。スクリュープロペラがなくなるので振動や騒音が大幅に減少する。また、原理的には大幅な推進効率の向上が見込まれるといわれている。日本では1976年(昭和51)神戸商船大学(2003年神戸大学と統合)の佐治吉郎(さじよしろう)が電磁推進船の模型による水槽での航行実験に成功、現在も研究が続けられている。85年には日本造船振興財団(現シップ・アンド・オーシャン財団)で実証実験船「ヤマト1」の研究事業が開始され、92年(平成4)完成し海上での航行実験に成功している。現在「ヤマト1」は、神戸海洋博物館の野外展示物となっている。
[森田知治]
『『超電導電磁推進船「ヤマト1」』(1995・シップ・アンド・オーシャン財団)』▽『岩田章著『応用超伝導 電磁推進船から超伝導自動車まで』(講談社・ブルーバックス)』