改訂新版 世界大百科事典 「青肉」の意味・わかりやすい解説
青肉 (あおにく)
green meat
マグロ類を加熱したときに生ずる淡青緑色の変色肉。グリーンミートともいう。ビンナガなど肉色の淡いマグロは缶詰原料として主にアメリカに輸出されている。缶詰製造時にこれらのマグロを蒸煮すると,本来明るい淡赤色になるはずの肉が,ときに淡緑色から灰緑色を呈したり,異常に暗い色調になることがある。アメリカでは,これをgreen color,dead colorあるいはdark colorと称し,格外の不良品としている。日本では一般にマグロの青肉と呼ぶ。青肉の発現には,筋肉色素ミオグロビンと海産魚介類の筋肉中に普遍的に含まれるトリメチルアミンオキサイド(TMAO)が関与する。とくにTMAO含量の高いマグロが青肉になりやすく,ビンナガの場合,尾部肉100g当りのTMAO窒素が7~8mg以上のものは蒸煮後,青肉になることが経験的に知られている。TMAOは還元されると魚介類特有のなまぐさい臭いをもつトリメチルアミンを生成するが,この変色肉も一般に独特の臭気を伴っている。
色調が類似しているものにブルーミートblue meatというのがあるが,これは加熱したカニ肉にみられる青変肉を指す。煮熟したカニやカニ缶詰の肉が淡青色から灰青色に変色したり,濃い青色の色斑を生じたりすることがある。この現象は,鮮度低下したカニや老大ガニに出やすく,また貯蔵加工中の温度変化が大きいと出やすい。煮熟前に十分脱血したカニはブルーミートになりにくいことから,銅を含んだ呼吸色素ヘモシアニンが原因物質とされている。缶詰製造では,変色防止のため分別凝固法(低温煮熟法とも呼ぶ)が広く用いられている。この方法は,カニ肉タンパク質とヘモシアニンの熱凝固温度がそれぞれ55~60℃,70℃と,かなり差があるのを利用し,まず約55℃で加熱し肉タンパク質だけを軽度に凝固させた後,ヘモシアニンを洗い出し,ついで100℃で肉タンパク質を完全に凝固させるものである。
執筆者:山口 勝巳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報