改訂新版 世界大百科事典 「非水溶媒」の意味・わかりやすい解説
非水溶媒 (ひすいようばい)
non-aqueous solvent
広い意味では水以外の溶媒をいう。その意味では有機溶媒もこれに属するが,通常は液体フッ化水素HF,液体アンモニアNH3,液体硫化水素H2S,液体シアン化水素HCN,硫酸H2SO4などのような無機の液体をいう。これらの最大の特徴は,無機化合物のみならず一部の有機化合物にも高い溶解力を示し,かつ水に似た次式のような自己解離autoprotolysisをすることである。液体ヨウ素I2,無水酢酸(CH3CO)2Oなどをこれに含ませることもあり,また非水溶媒としてとくに加圧液化あるいは冷却液化させて用いる溶媒をさす場合もある。
2HF⇄H2F⁺+F⁻
2NH3⇄NH4⁺+NH2⁻
2H2S⇄H3S⁺+SH⁻
2HCN⇄(H2CN)⁺+CN⁻
2H2SO4⇄H3SO4⁺+HSO4⁻
2I2⇄I⁺+I3⁻
これらの溶媒は自己解離のほか,以下のような水に非常によく似た性質をもっている。(1)電解質の解離 酸,塩基,塩などの多くの電解質が溶けて電離し,電流を通すようになる。(2)加溶媒分解(ソルボリシス) たとえば,金属塩化物は液体アンモニアに溶解すると,HgCl2+NH3─→HgNH2Cl+HClのようなアンモノリシスをする。(3)両性現象 たとえば酸化亜鉛ZnOのような両性酸化物は水溶液中では,強酸に対しては塩基として,強塩基に対しては酸として働くが,同様の現象が非水溶媒中でも起こる。
執筆者:岡崎 廉治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報