家庭医学館 「顎骨嚢胞」の解説
がくこつのうほう【顎骨嚢胞 Cyst of the Jaw】
あごの骨の中に袋状のもの(嚢胞)ができる病気です。
歯に原因があっておこるものと、歯に原因がなくておこるものとがあって、どちらもあごが腫(は)れるのが特徴です。
◎歯に原因のある嚢胞
■瀘胞性歯嚢胞(ろほうせいしのうほう)
歯が生えるまでの期間、あごの骨の中で歯がつくられていきますが、歯をつくる組織が変化して、骨の中に嚢胞ができるもので、中に淡黄色の内容液が入っています。
■歯根嚢胞(しこんのうほう)
むし歯が原因で、歯の根の先端にできた歯根肉芽腫(しこんにくげしゅ)が大きくなって嚢胞になったものです。この嚢胞は、細菌が感染することがしばしばで、中に膿(うみ)が入っています。
[症状]
嚢胞は徐々に大きくなって、あごの骨を溶かし、あごが腫れてきます。
瀘胞性歯嚢胞は痛みをともなうことはありませんが、歯根嚢胞は熱や痛みをともなうことがあります。
X線検査が診断の決め手です。
[治療]
嚢胞を放置しておくと、周囲の歯が動揺したり、上あごにできた嚢胞が上顎洞(じょうがくどう)に広がり、蓄膿症(ちくのうしょう)(上顎洞炎(じょうがくどうえん))をおこしたりするので、手術をして嚢胞を摘出します。
歯根嚢胞はむし歯が原因となるので、予防には、むし歯を早く治療しておくことが重要です。
◎歯に関係のない嚢胞
上あごに発生する嚢胞には、鼻口蓋管嚢胞(びこうがいかんのうほう)と球状上顎嚢胞(きゅうじょうじょうがくのうほう)があります。
下あごに発生する嚢胞には、外傷性骨嚢胞(がいしょうせいこつのうほう)があります。
[症状]
まったく無症状ですが、まれに口蓋の正中(せいちゅう)(中央)で前歯の部分が腫れることがあります。
[治療]
上あごにできた嚢胞が大きくなると、鼻腔底(びくうてい)の骨を吸収して、鼻づまりをおこすことがあるので、摘出することがあります。外傷性骨嚢胞は、治療の必要はありません。